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18years  作者: 田中タロウ
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第2部 第29話

ヤクザとはおよそ関係ないイベント、クリスマスがやってきた。


しかし!

ヤクザと言えども人間だ。

クリスマスともなれば、それぞれ予定もあるようで・・・


「少な!!今日、お屋敷で夕ご飯食べるのって7人だけですか!?」

「クリスマスイブは毎年こんなもんやよ」

「ふーん・・・で、あんたはその7人に入ってる訳ね?」


台所の椅子でサヤエンドウのサヤ取りを手伝ってくれている大輔に目を向ける。


「・・・もう手伝わねーぞ?」

「ごめんね、暇人クン」

「さよなら」


ちなみにその7人にはコウちゃんも含まれる。

彼女とかいないのか。モテそうなのに。


「・・・俺にはそういうこと言ってくれねーの?」

「いや、大輔は別に今日ここにいてもおかしくない」

「・・・」


散々ひどいことを言われつつも、けなげにサヤ取りに励んでくれる大輔。

いい男だ(?)。



廣野組では、毎年クリスマスイブにちょっと変わった光景が見られるらしい。

あ。その「変わった光景」が階段を下りてきた。


「暑い・・・水くれ」


統矢さんがうっとおしそうに、襟をつまむ。

ビシッと決まった黒のタキシード姿。


「おい。統矢。遅れるぞ、早く車に乗れ」


そういう組長もタキシード。

二人とも本当によく似合う。

普通の男がこんなもん着た日にゃ、ただの仮装行列だが、

それなりに風格のある人が着ると、こうもカッコいいものなのか。


しかし、二人ともその表情は冴えない。

統矢さんい至っては不機嫌丸出しだ。


宏美さんが教えてくれたことには、

毎年クリスマスイブに、どこぞの政治家達が合同で開くクリスマスパーティーがあるらしい。

クリスマスイブに開催するってところが、招待客の都合を考えない傍若無人ぶり全開だ。


政治家をはじめ、財閥や大企業トップなどなど・・・要は大金持ちのセレブパーティだ。


そんな人たちは、何よりも地位や世間体を大事にする。

汚い仕事は自分達で決してしないが、どうしてもやらないといけないこともある。

そういう時に、ヤクザを使うのだ。

廣野組は「そういうヤクザ」の代表だ。

とゆーわけで、このパーティにも毎年招待されている。


ただし、そこはやはりヤクザ。

ホスト側としても、本気で招待したい客ではない。

でも、いざと言うときには役に立ってもらわないといけない。

そこで渋々、お義理で招待している。


廣野組側としても、彼らは貴重な収入源だ。

「招かれざる客」(ちゃんと招かれてはいるが)だと自認しながらも、出席せざるを得ない。

しかも、パーティでは「出席している」ということをアピールしつつ目立たないように・・・


って、よくもここまで統矢さんが嫌いなことを揃えたパーティだな、と感心したくなる。

統矢さんが不機嫌MAXなのもうなずける。


組長も決していい気はしないだろう。

でもさすが、そこは「組長」。

そんな様子はおくびにも出さない。


統矢さんも、いざ出発となると、ビジネスマンよろしく、仕事の顔になっていた。


組のリムジンに乗り込む二人の後姿を窓から眺める。

うーん、本当にカッコいいな。


「おい。見とれてる場合じゃないぞ。鍋、ふいてるぞ」

「うわっち」


女中・ユウには一生関係なさそうな世界だ。


「奥様が生きてたころは、組長と奥様の二人でお出かけになってたんだよ」


お藤さんが口を挟む。

おお、そうだよな。いかにも「夫婦同伴」って感じのパーティだもんな。


「統矢さんは二十歳になった年から参加してるけど、最初の頃は『絶対行きたくない』って、

随分駄々こねてたもんだよ」


駄々って二十歳になってもこねるもんなんですか。


「もしユウが『奥様』になったら、ユウも出席せんとあかんね」

「うわー、ユウが『奥様』!?キャラじゃなーい!!」


意地悪い笑顔で宏美さんと由美さんがケケケと笑う。悪かったな。

てか、「奥様」って誰のだ。やっぱ組長か。

・・・統矢さんじゃないよな。


1人で勝手にブルー入ってると、クリスマスにも関わらず盆と正月が一緒に来た。



「盆」は先ほど庄治に女の子が誕生したという連絡。

「正月」は・・・コウちゃんが持って帰ってきた「学期末試験 総合順位 1位」という紙。



私にとっては「正月」かどうか怪しいところである。

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