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18years  作者: 田中タロウ
41/109

第2部 第27話

翌日、組長に呼ばれて部屋に行くと、なんとも言えない顔ぶれが。


組長、統矢さん、大輔、マサさん、コウちゃん。


なんだ、忘年会で芸でもやれと言うのか。

もちろんそんな話じゃないことは、この気まずーい雰囲気でよくわかる。


「あの、なんでしょうか?」

「ユウ、お前わかってたのか?」

「何がですか?」

「お前を襲った連中のことだ」

「・・・」


げっ。もしかしてバレたのか?

コウちゃんの方をチラッと見ると真っ青な顔をしている。

ありゃりゃりゃりゃ。


「・・・すみません・・・」


コウちゃんがハッと私の方を見る。


「やっぱり知ってて黙っていたのか」


組長はすっかり呆れた顔だ。



今日、コウちゃんの学校からまた呼び出しがあったらしい。

内容は前回と同じくコウちゃんが男子生徒を殴ったとのこと。

しかも相手も前回と同じく村山の健ちゃん。

違うのは、今回は一発だけではなくかなりボコボコにしたらしい。


当然、村山の両親は激怒。

姉じゃ話にならん、ということで父親だと嘘をついてマサさんが出向いた。

どうでもいいことだが、マサさんがコウちゃんのお父さんって・・・よく疑われなかったな。


で、マサさんがよくよく事情を聞いてみると、村山の奴がコウちゃんに、

「お前の姉貴、元気か?自殺したんじゃねーの?」

とほざいたらしい。

コウちゃんはその意味を理解するやいなや、村山を殴り倒した。


危うく病院送りにまでなりそうだったところを、クラスメイト達が止めた。

えらいぞ、クラスメイト。


今日のところはマサさんが睨みをきかせて(・・・)解散となったらしい。

それ、余計に事態を悪化させてないか。



組長は腕を組んで少し考えていたがやがて口を開いた。


「統矢。お前は警察に村山一家のことを匂わせながらユウの被害届をだせ。

どうやら村山一家は随分と世間体を気にするようだ。ヤクザに凄まれるより警察につつかれる方が痛いだろう」

「わかった」

「マサと大輔、お前らは組員を使って実行犯を見つけろ。これだけ手がかりがあれば簡単だろう。

見つけたら段ボールに詰めて宅配便で警察に送りつけておけ」

「はい」


組長は何も冗談を言ったわけでも、比喩を使ったわけでもない。

本当に段ボールに詰めて送れと言っているのだ・・・。

それってやっぱり「生もの」なのか。

せめて「こわれもの注意」と「天地無用」扱いにしてやってくれ。

あ、でもクール宅急便はダメだぞ。



部屋を出ると、統矢さんとマサさんと大輔は自分の仕事をするべく、

さっさとどこかへ行ってしまった。


廊下でコウちゃんと二人、ぽつんと立つ。


「・・・ごめん・・・」

「コウちゃんが悪いわけじゃないでしょ」

「襲った奴らのこと知ってて、知らない振りしててくれたんだな」

「だって、コウちゃんには関係ないし」

「関係大有りだろ」

「でもさ。もしコウちゃんが直接復讐されてたら、それこそ生きてないかもよ?

私は一応女だからあれくらいですんだんだよ、きっと」

「・・・ネェちゃん」


コウちゃんが眼をウルウルさせる。

やばい、やばいぞ、これは。


「コウちゃん!!キスは禁止!!!」

「わ、わかってるよ!!!」


コウちゃんは真っ赤になってふくれっ面になった。

かわいい奴。


「コウちゃんがキス魔だとは知らなかった」

「人聞き悪いこと言わないでよ。俺、小さいころアメリカにいたから、

嬉しいこととかあったら、思わずキスしちゃうんだよ」

「何、その安っぽい漫画みたいな設定」

「設定って・・・」


コウちゃんはますますふくれっ面になる。

でも、何を思ったのか、急にとんでもないことを言い出した。


「そうだ、ネェちゃん。お詫びついでにお願いがあるんだけどさ」

「どういう『ついで』だ」

「俺、来週から期末テストなんだよね。今回のお詫びも兼ねてすげー頑張るよ。だからさ・・・」

「だから?」

「もし学年で1位取れたら、統矢さんとヨリを戻してよ」

「ヨリって・・・そもそもヨッてないし」

「だって、ネェちゃん、統矢さんのこと好きなんでしょ?」


グッと詰まる。

この場合の沈黙は肯定を意味するとわかっているけど、言葉が出てこない。

そんなことは当然お見通しよ、とでも言うようにコウちゃんは続ける。


「統矢さんもネェちゃんのこと好きなんだと思うけどなー」

「そんな訳ないでしょ」

「俺にはわかるもん」


ネェちゃんの気持ちをお見通しなら、ニィちゃん代わりの統矢さんの気持ちもお見通しって訳か。

いや、さすがにそれはないだろう。


「わかった?約束だよ!」


そう言うと、コウちゃんは敢えて私の返事を聞かないように走って3階へ上がっていった。



・・・さすがに学年1位はないだろう。

でも1学期は学年8位だったしな。

・・・どうしよう・・・







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