第1部 第3話
175センチ、容姿はまあまあ(多分)な俺。
160センチ、容姿は・・・綺麗というよりは可愛らしい感じのサナ。
家は隣同士。
保育園から高校までずっと同じ。
毎朝一緒に家を出て、放課後もどちらかの家で一緒に過ごす事が多かった。
いつも一緒にて、見た目も釣り合う(らしい)二人を周りはいつの間にか「恋人同士」と認識していた。
俺達も別にどちらから「付き合おう」とか言い出した訳でもなかったが、一緒にいるのが当たり前で、
これからもきっとずっとそうなんだろうと思っている。
でも「私も東京の大学に行く!」とサナがいきなり俺と俺の母親とサナの母親の前で宣言した時は、驚いた。
そう言ってくれるだろうとどこかで期待してたけど驚いた。
そしてすごく嬉しかった。
いっそのこと、東京では一緒に住もうかという話も出たが、なんか照れくさくって両方の母親に言い出せなかった。
実は、母親同士でも「一緒の家に住ませちゃう!?」という話で盛り上がっていたという話を聞いたのは、もう寮を契約した後だった・・・
6月。
東京はもう初夏の陽気だ。
ようやくこっちでの生活にも慣れてきた。
大学での講義とバイトに明け暮れる毎日。
サナと母さんからの
「好きなんだし上手いんだから空手は続けたら?」
という言葉もありがたく受け取って、
熱心な部員とは言えないが空手部にも入部した。
そんな時間の合間を縫ってサナとデートもよくした。
どこで情報を入手してくるのか知らないけど、
俺がどこかに行きたい、という前にサナはもう全てリサーチして、
勝手にデートプランを立てていた。
「楽で助かるけど、俺にも何かさせろよ」
「男は尻にひかれてる位がちょうどいいのよ」
「・・・母子家庭で育った女、って感じの意見だな・・・ありがたく拝聴しておくよ」
こんな日々が続くんだと思っていた。
このまま4年間が過ぎていくと思っていた。
6月下旬の暑い夜、サナの母親から電話がかかってくるまでは。