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18years  作者: 田中タロウ
22/109

第2部 第8話

人間、わからないとなるとますます知りたくなるのか。


それとも統矢さんと美月さんっていう超意外な組み合わせが好奇心をそそるのか。



いや、超意外でもないのか?

二人の性格を知ってるから意外に感じるけど、

傍目にはお似合いなのかもしれない。


統矢さんはなかなかかっこいいし、

美月さんは地味だけど美人だ、胸大きいし。

ここ、私にとっての重要ポイント。



大輔が知らないとなると、当然コウちゃんも知らないはず。

そうなると後は、古参組に聞くしかないが、

お藤さんや源三さんがそんなことペラペラ話してくれるとは思わない。



かくなる上は!

そうだ!本人に直接聞いてみよう!!!



女中をやってると、面白いくらいに人の食の好みが分かる。


例えば。


組長はあの歳にしては意外なことに揚げ物が大好きだ、特に鶏のカラアゲには目がない・・・高血圧じゃないのか心配だ・・・。

大輔は魚が好きだ、酒のつまみにホッケなんかを出してやると1人でたいらげてしまう。

コウちゃんと庄治は若者らしく肉LOVE!だ、焼肉なら何人前でもいけてしまうだろう。


そして統矢さん。

これまた意外なことに、卵料理が大好きだ。

一度フワトロのオムライスを作ったら、目を輝かせて食べていた。

サンドイッチの具もゆで卵とマヨネーズを混ぜたものが一番好きときてる。

王子様ってゆーより、星の王子様だ。



と、ゆーわけで次の日曜日。

私は組長の昼食とは別に、統矢さん用に、

ユウ特製!フワトロオムライスを作って持っていった。

ちなみにどう「特製」かというと、てっぺんに旗がついているのだ。

本日の国旗は我らがニッポン。


案の定、統矢さんはなんでもないように装いながら、

パクパクとオムライスを食べ始めた。

・・・背中が喜んでますよ、星の王子様。


「なんで旗がついてるんだ?」

「かわいいかな、と思って」

「こんな食えねーもんつけたってしょうがないだろ」

「・・・星の王子様のくせに生意気な・・・」

「は?」

「いえ、こっちの話です」


ころあいを見計らって本題を遠まわしに切り出してみる。


「統矢さんって美月さんと寝たことあるんですか?」

「お前・・・前振りとか、オブラートに包むとか出来ないのか?」


うーん。遠まわしになってなかったか。


「誰からそんなこと聞いたんだよ」

「私の直感です」

「うわ、当てになんねー」

「ハズレですか?」

「ハズレです」


なーんだ、面白くない。


「その直感はどこから来たんだ?」

「なんか、統矢さんの美月さんに対する態度って、他の女中に対する態度と違うかなって思って」

「なんだ、やきもちか」

「妬かれるくらいの男になってください」

「・・・言うじゃないか」


統矢さんはオムライスを食べ終えると、旗を親指と人さし指で挟んでクルクルと回し始めた。


「美月は行くところがなかったんだ。だから俺が拾ってきた」

「・・・統矢さんて、本気で家出人収集家ですね。ヤクザやるより孤児院でも開設した方が

世の中の為だと思いますよ」

「家出人はユウとコータだけだろ」


二人も拾えばじゅうぶんです。


「美月は違うよ・・・10年前、あいつの両親は廣野組のゴタゴタに巻き込まれて死んだんだ」

「え?」

「それで俺が責任とって美月をここに連れてきた」


予想外の重い話に私は唖然とした。

美月さんにそんな過去が?

10年前って・・・美月さん、まだ17歳じゃないか。

そんな時に両親がヤクザの抗争に巻き込まれて命を落としたなんて。


「美月んちはヤクザでもなんでもない普通の家だった。それなのに・・・。

完全に廣野組のミスで巻き込んじまった」


統矢さんは、まるで昨日のことを話すかのように悔しそうだった。


「10年前・・・もしかして統矢さんのお母さんもその時?」

「おお、よく知ってるな。そうだよ。でもお袋は極道の女だからな、いつ死んでも仕方ない」




極道の女である自分の母親の死より、

一般市民の他人の死を悼む統矢さん。


なんとなくそこに「ヤクザのプライド」みたいなものを感じた。






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