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18years  作者: 田中タロウ
20/109

第2部 第6話

廣野家の1階の大広間は100畳以上あって、

襖で5つの部屋に分けれるようになっている。


一番奥の部屋には掛け軸やら日本刀やら廣野組の歴代の組長と思われる人々の写真やらが飾ってある。

そして、反対側の一番奥の部屋が食堂になっていて、台所からも一番近い部屋だ。


今私がいるのは台所と反対側の奥の部屋・・・掛け軸やらがあるところだ。

目の前には統矢さんと大輔。

初めてここに来た時のことを思い出すなー。


その時と違っているのは、庄治がいないことと、

・・・統矢さんが怒っていることだ、それも、ものすごく。


統矢さんは、いかにもヤクザらしく怒鳴ったり、などということはしない。

でも、眼を見ればどれくらい怒っているか容易にわかる。


統矢さんは壁に掛けてある日本刀を手に取ると、あっという間に鞘から刀を抜き、

私に向かって振り下ろした!!

思わず瞼をぎゅっと閉じる!!!


殺される!!!


だけど、想像した衝撃はいつまでたっても襲ってこなかった。

恐る恐る眼を開けると、近すぎてその姿をはっきりと捉えられないくらい目の前に、

刀の先端があった。


「ユウ、お前ここにきてどれくらい経つ」

「一ヶ月・・・と少しです」

「じゃあ、もうわかってるよな。ここでは親父と俺の命令は絶対だ」

「・・・」

「それに逆らった奴は、どうなっても文句は言えない」


そういうと統矢さんは私の背後にすっと回り、

私の髪をグッと掴んで日本刀で切り捨てた。


「二度とあんな真似するんじゃねえ」


低い声でそう言うと、手に握った髪をパラッと捨てて部屋から出て行った。




「お前なぁ・・・」


後に残った大輔がため息をつきながら座り込んだ。


「なんであんなことしたんだよ」

「可哀そうだったから」

「だからって統矢さんに逆らったらどうなるか・・・。今回はこの程度で済んだから良かったようなものの。それにしても・・・っぷ」


大輔が私を見て噴出した。


「笑えるなー、その頭」

「え?」


普段私は、Tシャツにハーフパンツ、髪型はポニーテールという軽装で、

さっき統矢さんはそのポニーテールを掴み根元から切った。


鏡がないから分からないが、さぞかし不恰好な髪型になってるんだろう。


「さっさと美容院かどこかで整えて来いよ」

「うん。あ、ねえ、源三さん達はどうなったの」

「お前の度胸に免じて今回はお咎めなしだって」

「そっか、よかった」


それが一番気がかりだった。

私のお願いを聞いたばっかりに、あの3人にとんでもないトバッチリが行っていたら

どうしようと思っていたのだ。


「ほら」


大輔が封筒をよこした。


「何これ?」

「統矢さんが渡しとけって。源三さんから聞いたよ、給料渡しちまったんだろ?」


中をのぞくと、一万円札が何枚も入っていた。





「もうコータと離婚?」


由美さんは笑いをかみ殺しながら髪を切ってくれた。


「うん。短い結婚生活だった」

「あはは!全くー、いくらお金がないからって自分でこんな思いっきり髪切る人、初めてみたよ。大失敗だし」


さすがに統矢さんに切られたとは言えない。


「すみません、よろしくお願いします」



その日の夕食時は、会う人、会う人みんなに


「なんだー、失恋でもしたのか?」


と言って笑われた。

いや、なぜ笑う?笑う必要はないでしょ?

その謎は庄治が解決してくれた。


「童顔でチビでショートカット。なんか小学生みたいだなぁ。それも男」

「・・・」


器用な由美さんが一応お洒落なショートにしてくれたんだけどな、

それがわからない様じゃ、お前なんかいつまで経っても「脇役A」だー。


「それにしても、お前度胸あるなぁ。処女のくせに」

「処女って関係ある?」

「だって、身を売ってまであいつらを助けようとしたじゃん」

「あ。そうだった」

「統矢さんに逆らう奴、初めて見たし」


そういえば今日はあれ以来、統矢さんを見ていない。

どうしよう、一言謝っといた方がいいのかな。

お金のお礼も言ってない。

と、思っていたら本人が食堂に入ってきた。


き、気まずい!

思わず視線を逸らせようとした時、統矢さんの間の抜けた声が降ってきた。


「なんだ、どこのガキかと思った」


・・・あなたの辞書に「わだかまり」って文字はないんですか?








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