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18years  作者: 田中タロウ
15/109

第2部 第1話

気持ち悪いー・・・



私はテーブルに突っ伏した。

煙草とお酒の臭いが鼻につく。

ここは・・・そうだ。居酒屋だ。


今にも意識を飛ばしそうになっていると、頭の上から声が降ってきた。


「おい、大丈夫か、こいつ」


低くって渋くっていい声じゃないの。

あんたは「男A」と命名しよう。


「いやー、今まで飲みながら話してたのにいきなりぶっ倒れちゃって」


別の声が答える。

「男B」だな。


「どうします?このまま連れて帰って楽しませてもらいますかぁ?」


また別のニヤニヤした軽い声がする。

「男C」・・・いや、とんでもないこと言ってるから、

あんたなんか「脇役A」だ。




グルグル回る頭で配役を決定したところで、再び男Aの声がした。


「それもいいな。取り合えず持って帰るか」


こうして私はなんだかよくわからないまま、人生初のお持ち帰りをされてしまったのだった。




---------------------------------------------------------------------------------





茶色い和風の天井に、丸い照明。

柔らかい布団の手触り。

新しい畳の香。


ここはどこだ?

私は確か居酒屋で潰れて・・・

そうだ、お持ち帰りされたんだ。


じゃあここは・・・?


起き上がるとそこは8畳くらいの和室。

といっても、私が今寝ている布団以外何も無い。

窓も締め切られていて、今が朝なんだか夜なんだかもわからない。


ふと、違和感を覚える。

この和室に似つかわしくない大きめの扉があった。

木製ではあるが、ノブが付いた普通の扉だ。


他に出入り口がないから、この木の扉が廊下にでも繋がっているのか・・・


一瞬悩んだが、この扉を開けないと今自分がどこにいるのかもわからない。

思い切って布団からでて(あ、頭痛い・・)、

ドアノブをまわす。



扉を開けたら、ヤクザさんがずら〜っと並んでたりして。


なんて、一人くだらないことを考えていたが、

扉を開けた瞬間、そのくだらない考えが当たっていたことを思い知らされ、

私は思わず再び扉を閉じた。



なんだ?

なんなんだ??

ドアの向こうに居た奴は!?


私が呆然としていると、今度は扉が向こうから開いた。


「おー、眼が覚めたかぁ」

「・・・」


廊下にはさすがにヤクザがずら〜っとは居なかったが、

このスーツに金のネックレスという、ヤクザの金型のような男が一人立っていたのだ。


身長が150センチない私から見ると、男の人は大体全員大きくみえるのだが、

こいつはそうでもなかった。

その身長と細い身体のせいで、肩まで伸びた長髪も悪そうな顔つきも、かえってユーモラスだ。

歳も私とそう変わらないだろう。いいとこ20歳くらいだ。


「なんだ?ビックリしすぎて声もでねえかぁ?」


この声、このしゃべり方!

急速に記憶が蘇る。


「あ!あんた!脇役A!!」



その後、私が首根っこをつかまれて、廊下を引きずって行かれたのは言うまでもない。





男A「やっと起きたか、三年寝太郎」


全力で徒競走ができるくらい広い畳の部屋で、

私は「男A」と「男B」の前に座らされた。


「あの〜、私そんなに寝てました?」

男B「あんたが酒場で酔いつぶれたのはもう一昨日の話なんだけど」

「え・・・」


ちなみに今は朝だ。

ってことは何か?

私は昨日丸一日、こいつらに好きなようにされちゃってたのか?

いや、その割には服もちゃんと着たままだし。


考えてることが顔に出たのか、男Aが苦笑いしたまま言った。


「貞操の心配してんのか?さすがにあんなに大口開けて爆睡されたらいくら俺達でも、手ぇ出す気にはならないなあ」

「それはよかった。私処女なんで」

「・・・」


男達3人は顔を見合わせて噴出した。



それにしてもこの大きな建物は一体何なんだろう?


私が寝かされていたのは2階で、今いる大広間は1階だ。

2階の廊下は、分厚い絨毯が敷き詰められ、左右にいくつもの部屋があったが、

どれも例の木の扉で閉じられていた。

壁には高そうな装飾品がずらり。


1階に降りるとき、上にあがる階段が見えたから恐らく3階建て以上の建物なんだろう。


今いる1階は純和風の造り。

真ん中にこの大広間があるのだが、他がどうなってるのかは知らないし、

あまり積極的に知りたいと思わない。


そして、今目の前に居る3人の男達。

一人目は、先ほど私の部屋に入ってきた「脇役A」。

二人目は、(私からみれば)恐ろしく大きい「男B」。

そうそう、居酒屋でこいつに声を掛けられたんだった。

気が合って飲みまくってたらこの様だ。

男Bはあの日と同様、Tシャツにジーパンという軽装だ。

ちなみに茶髪のツンツン頭に左耳にピアス。

ゲーセンに行けば30秒に1人出くわすタイプだ。


三人目は・・・。

こいつがどうにもよくわからない。

脇役Aと同じくスーツ姿なのだが、スーツの種類が全然違う。

パリッとした感じの上品なスーツでネクタイもしている。

でも、お洒落スーツというのでもなく、どちらかと言えば普通の会社員。

手にはこれまた黒の通勤バック。

歳は25歳くらいか。


なんともミスマッチな3人だ。

並べてみると「若い日本人男性の種類図」ってな感じ。

あとここにオタク風な奴を加えれば、図の完成だ。

あなたも必ずこの4人のどこかに分類されるはず!


「やべっ!会社に遅れる!」

やっぱり会社員だったのか。

男Aは腕時計を確認しながら足早に部屋を出て行った。



「で。あんたはどうすんの?」


脇役Aも、バイトがあると言って出て行った後(その姿格好でなんのバイトですか、という突っ込みはさておき)、

男Bが私に聞いてきた。


「え〜と。帰ってもいいの?」

「別にいいけど。どこに住んでんの?」



そのとき、あることを思い出した。


「あ・・・私、家出したんだった・・・」










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