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18years  作者: 田中タロウ
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第1部 第11話

俺が一人、この18年の思い出に浸っている間も、

この組長という男は俺の顔を繁々と見つめる。


何を考えながら俺を見ているんだろう。


もし母さんに非があって二人が別れたのなら、

俺はこいつにとっては面白い存在ではないだろう。


逆にこいつのせいで別れたのなら、

俺は謝罪の対象になるんだろうか。

だったら、いっそのこと手術代200万、払ってもらおうか。


なんて、プライドの欠片も無いことを考えていると、

廊下の向こうから聞きなれた声が響いてきた。


「れーん!!!」


え?なんで??まさか!?



ガラッ!!!!



思いっきり勢いよく開いた襖の向こうに、よく知っている顔が現れる。

ただそのアーモンド形の大きな瞳は今にも泣き出しそうだ。


肩まで伸びた茶色の髪に、

鮮やかな緑のエスニックな感じのワンピースと黒いレギンス。

白くて細い素足にはオレンジのペディキュアが施されていた。


「サナ!!おまっ・・・なんで・・・?」


サナの後ろにあまり見たくない姿が見えた。

ビール付き黒スーツのあんちゃんだ。

こちらは苦虫を噛み潰したような顔をしている。


なるほど、どうやらサナは俺のバイト先に飯でも食いにきて、

店長から事情を聞いたのだろう。

そして、この黒スーツにここまで案内させた・・・と。

すげーな、おまえ。


「蓮、こんなとんでもないところ(確かに)で、何してんのよ!?」


と言ってから、俺の目の前の人物に眼を移し、ポカンと口を開いたまま固まった。


「なんでもないよ。もう用は済んだから帰ろう」


俺は立ち上がってサナの肩を抱き、玄関へ向かった。



本当は何にも済んでいない。

色々聞きたいこともあったし、向こうもそうだろう。

でも、今更色々知ったところで何も変わらない。

だったら別に知る必要もないだろう。


俺とコータさんが今日居酒屋で会ったのは単なる偶然だ。

その偶然がなければ、俺とあの男は一生顔を合わせることもなかったんだ。



玄関で二人して靴をはいていると、後ろから再び組長に話しかけられた。


「おい、蓮」


話の内容は・・・いくつか候補が考えられる。

恐らくそのうちの一つだろう。

俺は気づかれない程度に身構える。


「おまえ、俺の後を継ぐ気はないか?」


ええ!?

なんだって!?


な〜んてね。


冗談か本気か知らないが、三文小説にありがちな展開だ。

俺の「お話候補」の一つにちゃんと挙がってますよ、組長さん。


俺は澄まして答えた。


「いいよ、別に。でも継いだその日のうちにこの組は即・解散だ」



そして俺はそのまま振り返りもせずに、廣野家を飛び出したのだった。






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