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18years  作者: 田中タロウ
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第5部 第20話

「こちら、アルファ。ターゲット確認。階段へ向かっている模様」

「こちら、ベータ。ターゲット確認。ターゲットは今2階の踊り場を過ぎた模様」

「こちら、ガンマ。1階にてターゲットをかくに・・・あれ?降りてこない」

「あまーい」

「ゲッ!蓮!!」


俺は、1階の柱の影に隠れているガンマの後ろから、銃を突きつけた。


「両手をあげろ」

「くっ!汚いぞ、蓮!」

「ほざけ。3人がかりで、1人を狙う方がよっぽど汚い」


その時、3階と2階からアルファとベータが顔を出した。


「た、助けてくれ!」


ガンマが情けない声で助けを求める。


「蓮、落ち着け。ガンマを離せ」

「じゃあ、二人ともこっちに降りてくるんだな」

「・・・くっ」


アルファとベータは顔を見合わせると悔しそうに階段を降りてきた。


「さあ、来たぞ。ガンマを離せ」

「ああ、いいぞ」


俺は二人に向かってガンマの背中をドンっと押した、

と、同時に銃の引き金を引いた。


「くらえ!!!」

「だ、騙しやがったな、蓮!!」

「うわー!!!!」


たちまち辺りは真っ赤に染まり3人は悶え苦しんだ。


「何だ!?この赤い水は!?」

「わははー!食紅だぁ!どうだ!?参ったか!?」

「蓮!いい気になるな!かくなる上は・・・」


3人はポケットから何やらボールのようなものを何個も取り出した。


「・・・な、なんだよ、それ・・・」

「ふふふ。くらえー!!!!」

「うわー!!!!」

「はははははー!水風船だぁ!しかも赤い絵の具入りだぁ!」

「おい!!人畜無害なものにしろよ!反則だぞ!!」

「だまれ!ヤクザに反則もクソもあるかぁ!!!」

「くそ!!食らえ!」


俺は再び銃・・・水鉄砲・・・を撃った。


「うわー!」

「ぎゃあー!」

「くそお!もう1個、水風船だあ!」

「まだ隠し持ってやがったか!!」

「わーーーー!」


「お前ら!!!何をやってる!!!」

「げっ。組長・・・」





「お前達、歳を言ってみろ」

「24歳です」

「20歳です」

「23歳です」

「19歳」

「いっぺん人生やり直して来い」


ところ変わって大広間。

アルファとベータとガンマと俺は、

怒りまくってる組長の前にちょこんと正座していた。


「屋敷の中で水遊びか。前代未聞だな。しかもご丁寧に色水ときてる」

「雰囲気でるだろ?」

「そうだな。まるで本当に銃撃戦があったみたいだぞ」


おお。

本気で怒ってる。


でも、元はと言えば組長が悪い。


俺が廣野家に引越してきて早々、

「蓮は跡継ぎになるつもりがないらしいから、俺の息子扱いしなくていい」

と組員全員に言い渡しやがった。

お陰で、赤ん坊時代の俺を知ってる奴や、昔組長にカワイがられた奴なんかは、

俺をいいオモチャにしてくれている。


若い奴らは、組長にああは言われても、最初のうちは俺のことを敬遠していた。

だけど、こんなヤクザ集団の中に堅気のフツーな男が一人。

しかも顔は組長とそっくりだけど、組長の息子扱いする必要はない。

となれば、イジメの標的には最適だ。


特に、俺を最初にこの屋敷に連れてきた3人組は、

ここぞとばかりに俺を攻撃してくる。


3人の名前は・・・覚えるのに頭を使うのももったいないので、

俺は適当に「アルファ」「ベータ」「ガンマ」と呼んでいる。

当然3人からはクレームがきたけど、

「A、B、Cよりカッコイイだろ?」

と言うと、何故か納得したようだ。


ちなみに、誰がアルファで誰がベータで誰がガンマでもいいけど、

一応背の順に名付けた。


1番目にデカイのが、金髪にピアスのアルファ。

3人の中ではリーダー格でなかなかカッコイイ顔つきだが、鼻ピアスがもったいない。

実はこいつ、コータさんの記録を上回り、小学生の頃からここに住んでるという生粋のヤクザだ。

2番目にデカイのが、丸坊主のベータ。

俺と同じ歳なのだが、何かと子供っぽくて困る。水風船もどうせこいつの作戦だろう。

一番チビなのが、俺がかつてビールをぶっかけた黒スーツのガンマ。

もっとも、ガンマは今日はさすがに黒スーツではなく、黒スウェットだ。


俺達4人は部屋が近いこともあり、日夜問わず攻防戦を繰り返している。


例えば・・・

寝てる奴の顔に落書きしたり、

風呂で目を瞑って頭を洗ってる奴のオケの中のお湯を水にかえたり、

靴を隠したり・・・


そういえば、昨日は俺が出かけてるすきに、

俺の部屋の鍵を勝手に新しいのに変えられたな・・・

あれは参った。


とまあ、こんな感じで俺は廣野家で生活している。


で、今日の銃撃戦だ。




「3人は減給」

「ええ!?」

「特に!」


組長はアルファを睨む。


「お前は若い奴らの頭だろ。反省しろ」

「はい・・・」


アルファがしょぼくれる。

そして、組長は今度は俺へ目を移した。


「蓮。お前はサナと1ヶ月面会禁止だ」

「はあ!?」

「問答無用!!4人とも、さっさと掃除しろ!!」


そう言うと、組長は怒りながら大広間を出て行った。

ちぇっ。



「たく、なんでこんなコトしねーといけないんだ・・・」


床を磨きながらベータが毒づく。


「自業自得だろ」

「くそ。絵の具、おちねー」

「それも自業自得」

「食紅もおちねーぞ」

「頑張れ」

「あー。腰いてぇ」

「そのインカムどうしたんだよ?」

「アキバで買ってきた」

「わざわざ!?暇だなー。ってか金がもったいない・・・」

「蓮こそ、そのリアルな水鉄砲、どうしたんだよ」

「昨日、サナと近所の秋祭りに行った時、射的で取ってきた」

「いいなー。デートかぁ」

「俺、あの女嫌い。怖い」

「そーいや、ガンマはサナに脅されてこの屋敷まで案内させられたもんな」

「あの女、どーゆー神経してるんだ?さすが、蓮の女だな」

「まーな」

「あら、それ、どういう意味?」


俺達が顔を上げると・・・


「げっ。若奥様」

「げっ。若女将」

「げっ。若大将」


さあ、誰が何言った?


「私もいるわよー」

「げげ!美優ちゃん・・・」

「ふふふ」


うわー。

ヤクザより怖い組み合わせだ・・・。



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