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18years  作者: 田中タロウ
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第5部 第16話

ん?

ここ、どこだっけ?


慌てて起き上がり、隣のベッドでサナが寝てるのを見て思い出した。

そうだ。沖縄旅行に来てたんだ。

で、ここは沖縄本島のホテル。


大輔さんに会った後、本島に戻ってきて夕飯食って、ホテルにチェックインした。

それで・・・


あれ?

それで?


記憶がない。


確か疲れて、ベッドに寝っころがって・・・

もしかして、俺、そのまま寝たのか?

よく見たら服もそのままだ。


もう一度サナを見る。

サナはちゃんと風呂にも入ったようで、パジャマになってる。


・・・・・・


彼女との旅行で、男が疲れていつの間にか先に寝ちゃってる、って・・・

うわー・・・一番やってはいけない失敗では?


サナなそんなことで怒ったりはしないけどさ。

俺がへこむ・・・。



とにかく俺は部屋に付いてるシャワーを浴びて、着替えた。

時間は午前2時。

こんな時間じゃサナを起こすわけにもいかない。

しかたなく自分のベッドに戻ろうとして・・・やめた。


サナのベッドに潜り込む。

サナは眠りが深いのでちょっとやそっとじゃ起きない。


後ろから抱きしめても、全く反応なし。

思わず笑ってしまう。


それにしても、いつも思うけど柔らかい身体だ。

俺はサナ以外の女を知らないから(組長とは違いますから)、

女の身体ってみんなこんなもんなのかどうかわからないけど、

初めてサナを抱いた時、その柔らかさに驚いて、思わず、

「サナの身体って脂肪だけでできてるんだな」

と言ってしまった。


俺としては褒めてるつもりだっただけど、いかんせん言葉が悪かった。

その後3日間、サナは一言も口をきいてくれず、

2ヶ月間、指一本触れさせてくれなかった。

・・・はい、俺が悪いです。反省してます。



サナが寝返りを打って、俺の方を向いた。

でも一向に起きる気配はない。


俺はマジマジとサナの寝顔を見た。

サナは、物凄くかわいいとか、綺麗とか言うわけではない。

もっとも、俺はサナに関しては外見なんて気にしたことがないけど。


でも、この寝顔は・・・

本当にかわいいと思う。

いくら見てても見飽きない。


自分しか見ることができない、って思うから余計にかわいく思える。

こればかりは手放しがたい、というか、手放さない。



ふと、昔のことを思い出した。

そう、あれは確か中学2年の秋のことだ。


サナも知らない、俺だけの秘密・・・。






俺達が中学校に上がった頃から、サナのお母さんだけではなく、

俺の母さんも夜、仕事へ行くようになった。

だから俺は下校後、サナの家でサナの作ってくれた夕飯を食べ、

そのまま一緒に宿題をしてから家に帰る、というのが習慣になった。


最初のうちはよかった。

小学校の頃の延長で、何も意識することなく、サナと普通に接していた。


でも、さすがに2年生になる頃には自分は「男」でサナは「女」だという

自意識みたいなのが芽生え始めた。


要は我慢してたわけだ、色々と。


今思えば、サナが俺のことを好きなのはわかってたし、

何も我慢する必要はなかったのだけど、

あの頃は若さゆえの変な罪悪感みたいなのがあって、何もできなかった。


そんな我慢をしていると、さすがに夜、一緒にいるのがしんどくなり、

飯だけ食って家に戻るようになった。


ところが、9月のある日。

物凄い台風が来た。

うちのボロアパートなんて、オズの魔法使いみたいに、そのまんま飛んで行きそうなくらい。


しかも道路が冠水し、俺達の母親は二人とも仕事場から帰れなくなっていた。


男の俺でも、雨の勢いと風の音でドキッとすることが何回もあった。

サナは一人で大丈夫だろうか・・・

布団の中でそう思ってると、案の定、台風以上の勢いでサナが飛び込んできた。


「蓮!もう無理!泊めて!!」


と、半べそ状態。


やっぱり無理だったかー、と笑いながらサナをうちに泊めた。

一緒に寝るなんて中学生になってからは初めてだったけど、

昔はよくやってたからなんてことはない、と思ってた。


でも・・・

いやー、無理でしょ。

寝れない、寝れない。


布団は少し離してひいたけど、なんせ狭い部屋だ。

すぐそこでサナが寝てる・・・

そう思うだけで、とてもじゃないけど俺は眠れなかった。


くそっ!

明日も朝練あるんだぞ!

寝ないと身体がもたねー!


俺はサナに背中を向け、とにかく目を瞑った。



どれくらいそうしてたか・・・

男だと言っても、所詮は13歳の少年だ。

全力で部活もしてきて身体はクタクタ。

いつの間にか眠くなり、ウトウトしていると・・・


モソモソモソ・・・


何かが俺の布団に侵入してきた。


「・・・サナ、何やってるんだよ?」

「怖い・・・一緒に寝て・・・」


そう言って、サナは後ろから俺に力いっぱいしがみついた。


これが二十歳くらいの女なら間違いなく誘ってるんだろう。

でも、サナはふざけたことに、本気で「怖いから一緒に寝て」と言いやがる。

その証拠に、3分もしないうちに幸せそうに眠りの世界に旅立って行かれた。


おい!!!!

ふざけんな!!!!

俺はすっかり覚醒したぞ!!!!

こんなんじゃ、もう絶対寝れないし!!!!


いや、サナも寝たことだし、俺は空っぽになったサナの布団に行けばいいじゃないか。

うん、そうだ、そうしよう。


できるだけ自分自身に「俺は冷静だぞー」と言い聞かせ、

胸からサナの手をそっと取った。

そして布団から抜け出そうとして・・・


サナの寝顔をまともに見た。


・・・あれ?

サナってこんなかわいい顔してたっけ?


俺は布団から出るのをやめて、寝転がったままサナの方へ向き直った。


目を軽く閉じて、スヤスヤと眠っている。

俺はそんなサナをじーっと見た。


子供の頃はよく一緒に寝てたけど、こんなにマジマジと寝顔を見るのは初めてだな。


まつげ、長いなー。

鼻ってこんなに小さかったっけ?

口ってこんな形してたっけ?

髪ってこんなにツヤツヤしてたっけ?


別に下心もなく、「サナってこんな顔だっけ?」という純粋な興味から、サナを見ていた。


そして、ふと、サナの唇にキスしてみた。


・・・

おい!何やってる、俺!?

いくらサナにだって、キスなんてしたことないのに!


い、いや、幼稚園の頃とかはしてたけど・・・


今のキスはそんなんじゃないよな・・・

おいおい、しっかりしろ、俺。


でもサナは起きない。


俺はちょっとホッとして、またサナの寝顔を見た。

で、またキスしてみる。

・・・やっぱり起きない。


なんだか面白くなって、サナの顔のあちこちにキスしまくってみた。

でも起きる気配なし。


おお。おもしろいぞ、サナ。


こうして俺は、俺って変態だなーっと思いつつ、いつまでもサナにキスし続けた。

「彼女にキスしている」というよりは、「愛犬にキスしている」って感じだ。


そしていつの間にか眠っていた。



「蓮!!!何してるの!!!」


朝、俺は母さんの大声で目を覚ました。


「あ、母さん。お帰り。もう道路大丈夫?」

「うん、水も引いたわよ、って、そうじゃなくて!

ああ、サナちゃん・・・かわいそうに・・・蓮なんかに傷物にされちゃって・・・」

「ちょっと待て。俺は何もしてないぞ」


キスはしたけど。


「第一、怖いからって、サナが勝手に家どころか布団にまで潜り込んできたんだ。

被害者は俺の方だよ」

「何言ってるの!!被害者はサナちゃんに決まってるでしょ!」

「なんだよー。決め付けるなよ。てゆーか、サナ、いい加減起きろ」


頭をコツいてみたけど全然起きない。


「デコに『肉』って書いてみよーかなー」

「・・・やめなさい、そんな子供っぽいこと・・・」


あれ?母さん、なんかトーンダウンしてないか?


「全く。いつまでたっても子供なんだから・・・」


そうブツブツ言いながらそそくさと風呂場へ行ってしまった。

俺は、まあいっかと思い・・・もう一度サナにキスをした。




ちなみにサナは、俺と初めてキスしたのは、

とゆーか、自分のファーストキスは、

中学3年の春だと思っている。


もう時効だろうから本当のこと言ってもいいかな、と思うけど、

サナは何故かそのファーストキスを大事に思っているらしいので、

あの嵐の日の出来事は黙っておこう。


俺がそんな思い出に一人浸ってると、

サナが目を開いた。


「・・・蓮?」

「起きた?珍しいな。歳のせいで眠りが浅くなったか?」

「もう、何言ってるのよ」

「誕生日おめでとう」

「・・・ありがとう」





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