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18years  作者: 田中タロウ
1/109

第1部 第1話

小学校の卒業アルバムの1ページ


『僕・私の将来の夢』


  「安定した大企業のサラリーマン     岩城 蓮」



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いまどき、こんな部屋があるのか。


母子家庭で貧乏育ちの俺でもそう思ってしまうくらい時代遅れな部屋。

4畳半に申し訳程度についているキッチン(というか、コンロと流し)と和式トイレ。

もちろん風呂はない。


「こんな」部屋でも、俺がこれから4年間、一人で暮らす部屋だと思うと

なんだか感慨に耽ってしまう。


俺が東京の一流国立大学に進学して一人暮らし。

信じられない。


何が信じられないって、うちにそんな金があったことだ。


もちろんこの部屋は「そんくらいだったら集金しなくていいんじゃないか」という程度の家賃の学生寮。

更に奨学金だってもらってる。


それでも大学受験・入学・引越し等々にはある程度の金がいる。

そんな余分な金はうちには絶対無いと思っていた。




昔から母さんは俺の成績が良いことをとても喜んでいた。

中学に入学した時、


「学校に許可もらって、新聞配達か何かのアルバイトをする」


という俺に、


「たかだか12歳のガキんちょが、生意気なこと言うんじゃない!そんな暇があったらデートでもしてな」


と言ったのは一人で生活を支えてくれていた母さんだった。



更に中学3年生の時に、


「高校には進学せず働く」


と言うと、皿が飛んできた(プラスチックの)。



さすがに大学進学はありえないと思っていたが、三者面談での担任の


「岩城君の成績ならどの大学でもいけますよ。国立に行って奨学金をもらえば、

ご家庭の負担も少なくてすみますし・・・」


という一言で、俺の進路は決まってしまった。


俺も、どうせならと思い、思いっきりレベルの高い東京のT大学を狙うことにしたのだが、

そう母さんに告げると初めてその表情が曇った。


「東京・・・ね」

「なんだ、母さん。俺が東京に行くと寂しいのかよ?」

「・・・別にそんなんじゃないけどさ」


いや、実際寂しかったんだろう。

母さんは未婚で俺を生んだ。

自分の親や親戚にも頼らず、たった一人で。


だからこの18年間、まさに二人っきりだったのだ。


そしてこの4月から俺は東京で一人暮らしを始める。

母さんを富士山の見える故郷に一人残して。











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