黒/Mavro
「今日もいる...」
男は吐き捨てるようにそう言った。
* * *
その日は生きるのもめんどくさくなるように太陽がこちらを照らしている。
朝起きて、外に出る時
ふとそれに気が付く。
「今日も...か...」
それははいつも男に付いては離れることはなく、これといって何かするわけでもなかった。
でも男は常に背後に人の気配を感じ続け、怯えていた。
「今日も暑いなぁ」
と男は言うと、強い日差しを避けるように、スタスタと森の中へ歩いて行った。
ゴロゴロ!
という雷の音で目を覚ました。
「最近は雨が凄いが今日は雷も大概だな。」
最近、男が住んでいるあたりは雨季に入り、最近それを見ることは無くなっていった。
しかし、男は生活が忙しすぎてそんなことにも気づいていなかった。
外では雨がザーザー降っており、そこらで雷が轟いている。
「今日も1日中家か。暇だな」
などと物憂げに言葉を零す。
男の家の前の草原に雷が落ちた。
ピカッと光り、あたりは見違えるほど明るかった。
その瞬間、男の背筋が凍った。
「いる…後ろに…感じる…」
男は光ったと、同時に背後にそれを感じたのだ。
「一体なんなんだ...」
男の心臓ははち切れる程、バクバクなっている。
雨足は強くなり、風がヒューヒュー音をたてる。
そのうち、轟音が鳴り、男は怖さのあまり失神した。
次の日、男は目を覚ますと外は、快晴だった。
心なしか外の動物たちも生き生きしてるように見える。
「昨日は怖かったなー」
と言って、男は力強く外へ飛び出した。
今日も男の後ろにはそれがついていた。
* * *
これは、まだ猿が二足で立ちはじめた頃、一人の男の話。
男が影だと気がつくのはまだ先になりそうだ。