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つながってるあおいそら。

作者: 広峰

 

 あっくんは、ぼくのことをなきむしだっていうんだ。

 でも、ぼくはなきむしなんじゃなくて、がまんしてるだけなんだ。


 ぼくが、こうえんでしらないおおきいおにいちゃんに、おやつのアイスをとられたときも

 ようちえんで、たっくんとぶつかってすりむいたときも

 あっ。ておもったけど、がまんしてたんだ。


 あっくんは、こまってるぼくのまえにたって、

 ぼくのアイスをとった、おおきいおにいちゃんをげんこつでたたいた。

 たっくんもけっとばした。


 おおきいおにいちゃんは、あっくんをおしてころばせたけど、

 ようちえんのこやませんせいは、あっくんにすっごくおこったけど、

 あっくんはどっちのときも、ぜんぜんなかなかった。

 おこったかおで、だまってた。


 ぼくは、おおきいおにいちゃんとあっくんがけんかするのがいやだから、おおきなこえでないた。

 わーんわーんってないたら、おおきいおにいちゃんのおかあさんがきて、ごめんねっていった。


 ぼくは、こやませんせいに、いっぱいいっぱいなきながら、あっくんはわるくないっていった。

 そしたらたっくんが、ごめんねっていって、こやませんせいがばんそうこうをはってくれた。


 ぼくは、あっくんがだいすきだ。

 あっくんは、ぼくがこまってると、すぐきてくれるんだ。

 だから、あっくんがけんかしたりおこられそうになったら、ぼくはないてしまう。

 ぼくは、けんかはよくないって、おかあさんにいわれてる。

 それで、たたかないって、ゆびきりげんまんしちゃったんだ。

 でも、がまんしてると、とってもむねがもやもやして、すごくくやしくなってしまう。

 そうして、もやもやでこまっていると、あっくんがたすけにきてくれるんだ。


 でも、あっくんは、ぼくのことをなきむしだっていうんだ。

 あっくんは、なきむしなんかきらいだっていうんだ。

 ぼくは、かなしくなってないてしまった。

 ぼくはあっくんがだいすきなのに。

 そういったら、あっくんは、あかくなって、とってもこまったかおをした。


 ようちえんの、ねんちょうさんになるまえに、あっくんのおうちがひっこしすることになった。

 あっくんのおとうさんのおしごとで、とおくのまちにいくんだって。


 あっくんは、つまらなそうにあっちむいたまま、だまってた。

 ぼくは、とってもさびしくなって、またないた。


 あっくん、あっくん。いっちゃいやだよ。


 ぼくがないたら、あっくんはぼくにたからものの、きれいなビーだまをくれた。

 だいじにしてた、いちばんぴかぴかなミニカーもくれた。


 ばか、なきむし。これやるからなくな。ぜったいなくな。

 だって、あっくん。ぼくさみしいよ。

 だいじょうぶだから。なくなったら。あと、じぶんのことぼくっていうな。

 だって、あっくんもじぶんのこと、ぼくっていうじゃない。

 おんなのこは、ぼくじゃなくて、わたしっていうんだよ。

 いやだ。あっくんとおんなじのがいい。えーん。

 なくなってば。ないたら、ぜっこうだからな。


 ぼくは、びっくりして、うんとがんばって、なくのをやめた。


 ぜっこうは、いやだよ。

 なかないなら、ぜっこうしない。だからぜったいなくな。

 うん。


 ぼくがなきやむと、あっくんは、ないしょばなしのときみたいに、ぼくのみみにてをあてた。


 あのね、いいことおしえてやる。

 なあに。

 そらは、ずうっとつながってるんだって。だから、ちきゅうは、ぜんぶおんなじそらのしたにあるんだって。おとうさんがいってた。

 つながってるの?

 うん。ここのそらと、ひっこしてくまちのそらは、つながってるんだ。

 そうなんだ。すごいね。

 だから、そらをみたらさびしくないんだ。


 あっくんは、そういった。

 でも、とってもさびしそうだった。


 ぼくは、またなきそうになったけど、ぜっこうはいやだからがまんしたんだ。


 あっくん、おてがみかくよ。

 ほんとう?

 うん。ぜったいかくよ。かいたら、おへんじちょうだいね。

 うん。

 そういえば、あっくん、じ、かけるようになったの?

 ……まだ。でも、すこしよめるから、おてがみもらったら、おへんじかくよ。


 あっくんと、おてがみをかくやくそくの、ゆびきりをした。

 そしたら、あっくんは、やっとわらってくれた。


 つぎのにちようびに、あっくんはひっこしていってしまった。


 おみおくりにいったら、あっくんは、りょうてをぐっとにぎりしめて、めにあてた。


 あっくん、ないてるの?

 ばか。ないてない。おとこは、ないたらかっこわるいんだ。

 おんなのこは、いいの?

 いいけど、だめだ。ないたら、ぜっこうだからな。ぼくがいなくても、ないたらだめだぞ。

 うん……。

 もう、まもってやれないんだから、じぶんでがんばれよ。

 うん……。ぼく、がんばる。

 ばか。ぼくっていうな。


 ぼくは、すごくすごくなきたかったけど、うんとがまんした。

 だって、あっくんとぜっこうはいやだから。



 あっくんに、おてがみをかいて、おかあさんにだしてもらった。

 あっくん、げんきですか。ぼくはげんきです。またいっしょにあそぼうね。ぼくはあっくんがだいすきです。


 あっくんから、おへんじがきた。

 おへんじのふうとうには、おおきいがようしが、ちいさくたたんでむりやりはいっていた。


 ひろげてみたら、あおいあおい、そらのえだった。

 そして、くれよんで

 ぼくっていうな

 ってかいてあった。


 あっくん、だいすき。

 わたし、ないてないよ。

 だって、おへんじうれしかったから。

 また、おてがみかくね。

 そしたら、また、おへんじちょうだいね。


 あっくんのおそらのえを、ぎゅってだきしめて、つながってるおそらにむかって、そういったんだ。




 終

このお話に最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

2010.11.25初


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