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二トントラック単独行の思い出

 その後京都には何度も行った。初回同様夜行列車でも行ったし高速バスででも行った。同級生の為にと買ったお土産を受け取ってもらえなかったこともあった。


 その頃から学校でのいじめとやる気の失速からしばしば授業をサボりがちになった。とは言え厳しい親に急き立てられる家では落ち着いて引き篭もることもできず、低空飛行のまま紆余曲折を経て就職した。


 仕事はそこそこ楽しめていたので真面目に通いはしたが、家では相変わらず落ち着かなく居場所じゃないと感じるようになってきていた。だからと言って一人暮らしするほど無計画でも行動的でもなかったので、いつしか会社の帰りには喫茶店に入り浸るようになった。

 当時はSNSは勿論BBSも未だ耳にもしない時代で、その頃の多くの喫茶店同様そこには常連ノートが置かれていた。


 私も自然と常連ノートに書き込みをするようになり、スタッフや常連の作るコミュニティにもいつしか参加するようになった。例えば、閉店と同時に常連メンバーがファミレスに車で移動した後、仕事を終えたスタッフが合流したり。学生やスタッフは昼間一緒に出掛けたりもしたらしいが、私ら社会人メンバーは専らそうした夜のお茶会程度ではあったけれど。


 ある時、バイトスタッフの某君が彼女と連絡付かないと大騒ぎをした。当時は未だ携帯電話が普及しておらず、アパート一人住まいで電話を持ってないなんてことは割りとよくあった。その一人暮らしの彼女と連絡が付かないと言うのだ。

 つまり、彼女から電話がないしアパートに行っても留守。店にも来ないし、バイト先は辞めたらしい。

 この時点で、何となくみんなは察してしまっていたのだが。


 今と違って当時はネカフェで夜を過ごすなんてこともできないし、ファミレスも24時間営業していない。実家に帰ったのでなければ夜には戻ってくるだろうと言うことで、当事者のバイト君が仕事中に急遽動ける私が車を出すことになった。同行したのは丁度仕事上がりの社会人スタッフの「奴」と、女性もいた方がと奴の彼女でもある常連の「姐御」。


 アパートに着いて待つことしばし、日付けが変わろうかという頃彼女は帰ってきた。案の定バイト君とトラブルがあったようで、彼に見つからないようバイトを替えて実家に帰る準備中だと涙交じりに聞かされた。

 トラブルの内容はまぁ、ありがちと言うかなんと言うか。その場の話の流れで、奴と私が二人でトラックをレンタルして彼女を実家まで送ることになった。

 よりによってなんで京都なんだよとは思わずにはいられなかったものの、頼られることに慣れていないので承諾してしまったのだが。


 その週末、奴が借りてきた二トントラックに彼女と東京での思い出の詰まった荷物を積んで西に向かった。処がどうしたことか、途中高速道路で何度か休憩するも奴が運転を変わろうとしない。

 その理由が分かったのは京都。と言っても京都盆地より手前の山科。行き先と聞いていた彼女の実家ではなく駅からほど近いアパートに着いてから。

 訝しみながらも荷物を下ろしてこれからどうするのかと言えば、奴は彼女が落ち着くまで泊まっていくと言う。つまり奴は最初から私を一人で帰らせる積もりで行きは全行程運転したと言う次第。


 帰り道、一人雨の降りしきる東名を走りながら考えていた。姐御には何て言えばいいんだとか、そもそも喫茶店の仕事はどうする積もりなんだとか。お蔭で眠気に襲われることなく無事に帰れはしたが。


 結局、店の方は長期休暇を取っていたがそのまま辞めたようだ。付き合っていた筈の姐御も別れ話が出てたとのことで「あんたあいつに利用されたわね」と笑われたので、多分姐御には予想がついていたのだろう。

 その姐御も喫茶店から足が遠のき、私も転職したりでそれ切りになってしまった。


 喫茶店も世代交代して、業態も変更して周囲の店も含めて客層もがらりと変わってしまっている。

 喫茶店時代の煉瓦造り風の内装がそのままなのでたまに足を運んで懐かしんではいるが、当時を知る人には勿論会うこともない。

 ご無沙汰しております。

 やっとの事で第二話を投稿します。

 今のところ、連作掌編のような状態ですが。


 兎にも角にも、お読みいただきありがとうございます。

 そして皆様の評価や感想は宝物です。駄目出しでも結構です。応援してやってくださいませ。

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