金掛けてんなぁ……元取れるのかな?
宗教の勧誘。商品を買わせる為の勧誘。
世の中のありとあらゆる勧誘事に興味が尽きない、もふもふもんですよ~。
私、勧誘されるの大好きなんです。一種の変態ですね(笑)
まぁ、勧誘を受ける事が好きなだけで、騙されるのは大嫌いなんですが。私が騙すのは良いが私を騙すとは何事だ!って自分勝手なヒトデナシの私(笑)
今までに数々の勧誘話に自ら乗っかり、色んな話を聞いてきました。
本気で時間さえあれば、本でも書けそうなぐらいに。
今回のお話も、とある、マルチ商会の勧誘に自分から、嬉々として乗っかった時の話です。
今回の私のターゲットに選ばれたマルチは、今までに受けたマルチの中で。
【勧誘にもっとも金を掛けてる】と私が思ったマルチのお話。
そのマルチは、何やらドイツで生まれたらしい。会長さんがドイツ人。パンフレットを見ただけなので、真実は私には分からないが。
そして、今回、私にマルチの紹介をして来たのは、若い頃に一緒になって、バイクを走り回らせていた時の昔の仲間。
コイツは、遊ぶ事は無いが、知り合い? と聞かれたら、知り合いと答える程度には、付き合いはある。
だから、コイツに私を騙そうとする意思は無いようだ。
本当に、良い話として、私を誘って来てる。
たまたま行った、パチンコ屋で、久し振りに再会した私達は、並んでパチンコをしながら、最近どう? なんて、当たり障りの無い会話をしていた。
そして、何やらアルバイトを本業とは別に、やろうと思い、昔の同級生に紹介して貰ったと言う。
おい! 副業と昔の同級生って、それマルチ臭がプンプンするんだが? 私はそう思い、地獄に落ちてる姿を見て、笑える程の仲でも無いコイツが、騙されて無いか話を、聞こうと思った。
思ったのだが……私は、コイツがバカなのを、すっかり失念していた。まぁ、要領を得ない。むしろ聞いてると逆に混乱してくる(笑)
で、結局、コイツも3日前に初めて話を聞いて副業をその場で契約したらしく、よく分かってないようだ。と言う事が判明した私は、コイツに。
「取り敢えずさ、その紹介してくれた昔の同級生ってのに、連絡して、興味持ってる友達が1人居た」
そう伝えてみてよ。今から電話して。
そして、外に出て、電話をしてきたヤツは。
『何かすげ~ホメられた、もう紹介する人を見付けるなんて、絶対にこの仕事に向いてるよとかなんとか、後で折り返し電話するからって言ってた』
ホメられて嬉しかったのか、ニコニコと私にそう伝えてきた。
お前さ……有望なカモですね。もっと頑張ってエモノを運んできてね。って意味で、おだてられてるだけだぞ? それ(笑)
まぁ、ここでコイツにネタバラシしても良かったのだが、せっかく私が楽しめるチャンスなので、どうせなら、その昔の同級生ぐらいが居る場所で、ネタバラシをしようと決めた。
昔の仲間の事よりも、私が楽しむ為に、すぐに教えない辺りが、私らしいと言えば私らしい。
2時間ぐらい経った後に、折り返しの電話が、掛かってきて、話をしてきた昔の仲間は。
『明日の土曜日に、研修会があるらしくて、そこに俺と、もふもふもんが行けるようにしてくれたみたい、その話があるから、今から来れたら、昔の同級生のところに来て欲しいって言ってる、もふもふもん時間ある?』
あります! パチンコなんかより楽しそうだから、全然大丈夫です。付いて行きます、どこへでも。
と言うノリノリ気分で、二人して、昔の同級生とやらが待つ、ファミレスへと向かった。
(昔の仲間と、昔の同級生……混同しそだな……よし、昔の仲間の事は以降サルと呼ぼう)
ファミレスに着くと、昔の同級生とやらが、私に向けて、簡単な説明をしてくる。してくるが、システム等の突っ込んだ話は、明日の研修会で。と言う姿勢なのか、マルチ臭は一切出して来ない。普通の販売ですよ~って感じで話してきていた。
まぁ……私としても、舞台が大きくなる事に異論は無い。その方がより楽しくなりそうだしな。
そんなこんなで、研修会とやらに、お邪魔させて貰う事になった。オラ! ワクワクすっぞ! どんなバカに出会えるのか、けんげぇただけで(笑)
迎えた翌日の土曜日。
私はサルと待ち合わせして、合流した後に、昔の同級生とやらが待つ場所に行く。
着いたのは、ちょっと大きなスーパーの駐車場。
他の何人かとも待ち合わせしてるらしく、車を停められる場所を選んだだけみたい。
そして集まった後に、研修会場へと出発。車の中で、初めて行く研修会に、ワクワクしてるサルと、サルとは違った意味でワクワクしてる私。
着いたのは、県内にある、県外には有名でも無い温泉地。そこの地区にある、一般にも貸し出してる、宿泊の出来る研修会場を借りてるようだ。
普通、マルチの勧誘なんて、ファミレスが関の山。
私は素直に、お~すごいな。こんだけの会場を取る必要があるぐらいの規模でやってるのか……。この中に、夢を熱く語られ、自分も夢を掴むんだ! と、現実が見えてないバカと、人を騙して楽して金を得ようとするバカが、沢山、ひしめき合ってるんだなぁと。
ちょっとズレた、私らしい感想を思った。
研修会は事前に、1泊2日の行程が組まれている事は聞いてきてる。これは……初日は、夢がどうたらとか、散々煽れるだけ煽って、2日目に勧誘するって感じかな?
そう思った私は、自分から積極的に動くのは、最後の最後だけにしようと心に決め。
バカに混じってバカを演じる事にした。
最初は、宿泊する為の部屋に案内された。
まぁ普通の畳の8畳間だった。シンプルな旅館の部屋って感じだ。
ここで、昔の同級生は、この研修場、温泉があるんだよ! すごいだろう! って感じに話してた。それに、サルや他のカモ達は、すごいとか言ってたが、私は。
「温泉地に建ってる貸し出ししてる研修会館に温泉があるのは、当たり前だろ、逆に無い方が、何をウリに貸し出ししようとしてるのか、市役所の奴を呼びつけて、2~3時間ほど、問い詰めたくなるわ、何をこのアホは、当たり前の事をほざいてんだ?」
そう思ってた。
その後、会議室のような場所に移動するように言われたので、移動したら、部屋の中には、沢山の人が既に集まっていた。
少しの間待ってる事になったので、周りが何を話してるのか聞き耳を立てていると、まぁ大体の組が。
『この研修会に来れたなんてラッキーだ』
『夢の実現の為に』
等と、カモ達に【貴方は選ばれた人ですよ】【夢を掴むならコレしかないですよ】と、ここに居ること、この話を聞ける事が、どれだけ貴重なのかを、刷り込む内容の事ばかり話してた。
この勧誘に必死な人達も、少し前までは、普通に暮らしてたかと思うと。何ともやりきれない気分になる。まぁだからと言って遠慮も容赦もしないのだが。
それから暫く経ち、会場内に高らかな音楽が鳴り響く。
しかも、わざわざオリジナルの音楽を使っているようだ。
『夢を掴め~希望はここに~あぁ我らの~○○(商品名』
まぁ、そんなような歌詞だ。
ざっと見、50人ぐらいの人が会場に居る。私のような紹介者がまだ新入りの場合に上司が付き添う3人組。何人かを成否に関係無く連れて来た事がある紹介者とそのカモの2人組。そんな感じの組が20~30ぐらい。
何か、そこら辺に居そうなオッサンが、安そうなスーツ着て、壇上に上がると、会場に響き渡るぐらいのデカい声で、イキナリ。
『夢を掴むぞ! 金持ちになるぞ! 夢を掴むぞ! 金持ちになるぞ!』
って、参加者や紹介者に向けて、拳を掲げながら叫んでる。
紹介者と言うマルチに荷担した側は、一緒になって、オッサンに続き叫んでる。おい……サルよ……お前もか(笑)
その後は、特に勧誘話も、システムについての話も無く、表彰式に移った。まぁよくある陳腐な手だわな。
紹介者達のやる気を引き出させ、更にカモを連れてこい。そう発破を掛けられてる訳だ。掛けられてる本人は、気付いて無さそうだが。
名前を高らかに読み上げられ、壇上に上がらされて、何人紹介しただの、まぁホメるホメる(笑)
その後に、参加者に向かって自分の目標を叫ぶ訳だ。
みなさんも、何かでか見た事があるような光景を思い浮かべてくれたら、正にそんな感じの猿芝居・学芸会が行われる。
私?付き合う訳ないじゃん。私は、熱狂的学芸会を見てるのにも飽きて、会場の後ろのテーブルに置かれた、この後の歓談会か何かの時に、食べるであろう、オードブルが置いてある所に、サルを連れて移動して、チキンナゲットを食っていた。
『おい、もふ~いいのかよ? 参加しなくても』
「いいんだよ! サルお前のここでの最大の仕事は、私への接待なんだから」
『え? 俺、もふを接待しなきゃダメなの? 何かやだな~』
サルよ……君は、本当に何も気付いてないんだな。こんな純情な純粋なサルをカモにしやがって。許すまじ! 後、イヤって何だよ? 肩揉ませたろか(笑)
まぁ、この時の私の態度と行動を、しっかりとチェックされていたせいで、後にあんな事になるのだが、この時の私には、知るよしも無かった。
その後、歓談会と言う名の、おしゃべりタイム。
私にも、知らん奴が何人か話し掛けて来たが、まぁ言ってる事は全員同じだ。
夢を~とか、お前ら他に表現の仕方知らんのか? そう思うぐらいには、同じ事言ってる。
私は、腹が減ってたので、下らない話を聞く気も無く。
「へ~。ほ~。で?」
3種類の返事を匠(笑)に使い分け、ひたすらオードブルをパク付いてた。
歓談会も終わり、後は自由時間なのだが、施設からなるべく出ないようにと言われた。まぁそりゃそうだわな。せっかく連れて来たのに、勝手に帰られたら困るだろうし。
「それ、軟禁ですか?」
ってツッコミしたかったが、我慢した(笑)
温泉に入り、夕食を食べて部屋で寛いでいると、サルの昔の同級生が、何やら有志で集まり、話をする。とか言ってきた。
もちろん、喜んで付いていく。
まぁ……書くのも億劫になるぐらいの事しか無かったので割愛。
その後23時頃に寝た。
翌朝、朝食に、そこらのコンビニで買ってきた、パン2個と缶コーヒーを貰ったが、もうちょっと何とかならんのかよ? と思った(笑)
まぁ、これだけの規模でやってるから、ケチるところは徹底的にケチるんだろうが、これから大金をせしめるカモにコンビニのパン2個はないだろ!(笑)
今日は待ちに待ったシステムの説明会。
ワクワクが止まらない。
さぁ! やったんでぇ! と意気込みも新たに、会場に向かう為に、部屋をサルと一緒に出たところで、サルの昔の同級生と、一番最初に挨拶してた安っぽいスーツ着たオッサンの二人が、私達を待ってた。
何やら私に用事があるらしく、上手い事サルを誘導して、昔の同級生とサルだけで、会場に先に移動して行った。
オッサンと私の二人きりになると、それまでは【私は紳士ですよ~】的な話し方をしていた、オッサンが口調を、がらりと変え。
『ちょっと部屋に入ろうか』
部屋に入ると……。
『君さ、何もかも分かってて参加してるよね?』
と切り出して来た。うん! その通り。まぁそんな事言わないが。
「え? 何の事です?」
すっとぼけてみた。オッサンは、1つ溜め息を吐いた後。
『そう言うのいいから、君の見解を教えてよ』
「はい、これはマルチの勧誘で、人の持つ欲望を煽るだけ煽り、金を掴むには、これしか無いと思考の誘導をして、商品を買わせる為の、研修会と言う名の大掛かりな猿芝居です」
ハッキリとそう伝えた。
オッサンは苦笑いを浮かべながら。
『たまに来るんだよね、君みたいな人、で? 君は何をしに? 興味あって話を聞きに?』
「そうですね~まぁ話も聞きに来たのは確かなんですが、この後の説明会で、皆さんの前で、いくつかの質問でもしてみようかなぁなんて(笑)」
『ネズミ講のシステムと照らし合わせて、何が違うのか? そんな辺りの質問かな?』
オッサンの質問に、笑顔で答えてあげる優しい私。
そして、オッサンは懐に手を突っ込み。
刃物を出して私を……。
なんてオチも無く、白い封筒を渡して来た。
『まぁ2~3時間で終わるから、その時間、私に君を雇わせて貰えないかな? 仕事の内容は、ただ静かにその場に居る事、簡単だろ? これはアルバイト料の先払い』
ここで、断ると言う選択肢も取れたのだが、本当に暴力に訴えて来られたら困る。目の前のオッサンぐらいなら、瞬殺出来る程度には、私も暴力に慣れて生きて来てるが、ワラワラと数に頼って来られたら100%負ける、その後どうなるかも分からんし、素直に雇われる事にした。
「あ~はい、別に正義の味方じゃないですし、どちらかと言えば、同じ穴のムジナですもんね、いいですよ、でも1つだけ、サル……あっ私の紹介者ですが、私がちゃんと話をして、抜けさせますね、聞いたところ、一番安い商品しかまだ買ってないみたいなので」
その後、置物のように、静かに説明会に参加した。
まぁ、それはいいんだが、何も知らない奴等が、必死になって勧誘してくるのを相手にするのが、非常に面倒くさかった。
私と一番偉いであろうオッサンとの裏の取り引きは、私とオッサン以外に知ってる奴も居ないので。
そして、ようやく解放された後、封筒の中を見てみたら、10枚の諭吉が入ってた。お~良いバイトだった。
サルに、お前がやってるのはマルチ商法で、こんな事してると、友達も信用も無くす事、マルチ商法とは、自分の信用や自分への信頼を金に変える仕事だ。等と、説明して、今後一切、向こうと接触しない事を約束させた。元々が純粋な奴なので、ちゃんと約束は守るだろう。
しかし……。研修会場を借りる金。諸々の経費。私のようなヤカラにポンと払える金。
今までに体験した、マルチ商法の勧誘の中で、本当一番金掛けてるなぁと思った。
さすが、一番安い商品でも30万、100万ぐらいで普通、一番高い物で500万もする商品を扱うマルチは規模が違うねぇ。
素直に感心した。
あっパンフレットに載ってるドイツ人が誰なのか聞くの忘れてた……。