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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕〔残酷描写〕が含まれています。

北欧神話シリーズ

【簡易版】アースガルズの男ロキ、母親になる

作者: 白緑
掲載日:2019/04/10

自由な想像でお楽しみください。


◆北欧神話 城壁の話あらすじ


神々「城壁欲しいなあ、誰か造ってくれないかなあ」

男「いいよ」



ロキ「男に城壁を途中まで作らせて、あとはおれたちで完成させよう」

神々「いいね」



神々「城壁が完成してしまうぞ、何してるロキ、殺すぞ」

ロキ「よし分かった、馬を誘惑してなんとかしよう」

※男の所有していた馬が、城壁用の石を大量に運んでいた。


↓ ★このへん


神々「やーい、失敗したなー!」

男「だましたな、女神フレイヤを寄こせ!」

トール「でりゃー」 ●このへん

ミョルニルどーん

実は巨人だった男は無事死亡


めでたしめでたし


◆ロキと馬の本番に至るまで

※時系列的には、星印(★)のあたり



 戦いの音が聞こえてきた雌馬は、ハッと立ち上がる。

 それまでの親しげな様子から一変、雄馬はそれを不審に感じた。

 それでも、機嫌よく鼻を鳴らしながら雌馬に近付いた。

 しかし、それもここまで。

 何故ならば、雌馬と雄馬が接触する瞬間、雌馬の姿が変わったからだ。


 背の高い、男の姿。

 ハンサムな顔立ち。

 そこに浮かぶ、どこか馬鹿にした表情。

 愚かな雄馬に突き付けられた指。


 北欧神話の神々は、誰もが特殊な才能を持っている。

 トールが雷を操り、オーディンがオオガラスを操りさまざまな情報を手に入れるように。

 ロキには、どんな生物にだって自由に変化できる能力があった。

 さて、もうお分かりかと思われるが、雌馬の正体を明かそう。

 美しい栗毛の馬は、ロキだったのだ。


「馬鹿な馬め。これはおまえと主人の男を引き離し、城壁を完成させないための罠だったのさ。主人ともども騙されやがって、ああ、いい気味だ」


 ロキは顔面に迫る馬に対して、嘲笑いながら自らの功績を称えた。

 そのまま森を去っていこうとしたロキだったが、何者かに邪魔をされた。

 邪魔立てしたのは、雄馬だった。

 雄馬はロキの上着を引っ張って、ロキの帰還を阻止していたのだ。

 振り返ったロキを、馬は強引に引きずり倒し、見下ろした。

 馬の四肢に囲われ、逃げられなくなったロキは、必死に頭を回す。


「いったい、なにが――」


 雄馬は地面をひっかき、鼻息を荒く鳴らした。

 発情している証拠だ。

 すわ、獣姦の危機かと、小鳥たちが驚いて羽をばたつかせた。

 しかし、心配ご無用、ここは神々の住まう世界。

 十五メートルの巨人が人間に変装し、大男トールがフレイヤに変装する世界である。

 馬は、人間の男に変化した。


「おいおい、いったいどういうつもりだ? おれをとっ捕まえておくなら馬のほうが、都合がいいんじゃないのか。そんなこと、獣のおまえには分か――」

「オレはどっちだっていいさ。おまえを得ることができれば」

「あんだって? おいおい、おまえもおれの頭が欲しいクチか? おれの頭は上等だぜ? いい家具ができるだろう」


 ロキは冗談を口にする。

 いや、冗談ではなく、本当に欲しい連中が過去にいたのだが。

 しかし、スヴァジルファリは違うと首を振る。


「おまえが欲しい。おまえの身体が」

「……正気か? 今のおれは雌馬じゃないんだぞ? そんなもん犯して何になるって言うんだ。人間や巨人の女なら、いくらでも紹介してやるぜ」

「できれば美しい栗毛色の雌馬が欲しいが、無理は言うまい。今得られるのはおまえだけなのだから」


 ロキとスヴァジルファリの会話が進めば進むほど、馬だった男の視線は鋭くなった。

 ロキは頭をフル回転させて、なんとか逃れようとするが、うまい考えは浮かばない。

 スヴァジルファリの身体が近づいた。

 いよいよもって、ロキは神々をたぶらかした代償を、自らの身体で支払わなければならなくなった。


「い、いやだ! 冗談だろ!?」


 ハンサムが故に、ロキは女性に不自由していない。

 このおれが、男のはけ口として使われるなんて、そんな馬鹿な!

 ロキにとってこの事態は、到底認められることではなかった。


「か、神々は生殖しなくても神を生めるんだ! 子どもが欲しいなら、性行為にこだわる必要はない!」


 ロキは、巨人の母と巨人の父を持つ子どもだ。

 にもかかわらず、神々であるほうが都合がいいと思って、自らを偽った。


「嘘をつくな、巨人の息子。その狡猾さ、人を騙す力、自信過剰な性格。どれも巨人の特徴そのものだ」


 一瞬で見破られたロキは、ちゃんと次の策を考えていた。

 今度は、巨人であるということを逆手にとって、相手を説得するのだ。


「原初の巨人は、寝ている間に、身体のさまざまな場所から子どもを産んだという!」

「おまえは原初の巨人なのか? 違うだろう?」

「今の神々は、原初の巨人から生まれた者たちだ。オーディンにすら、3/4は巨人の血が入ってる! そして、おれたちは原初の巨人の孫から生まれた存在だ。おれたち巨人に、不可思議な力が宿っていたって、なんらおかしくない!」


 スヴァジルファリは、ロキの主張をしばらく咀嚼した。

 それから、ロキにさらに顔を近づけて微笑んだ。

 馬であったなら、大きく鼻を鳴らし、尾を大きく揺らしていたことだろう。


「オレが欲しいのは、子どもではなく、行為そのものだ」

「……な、あ、ああっ……!」


 ロキは自らの失態を悟る。

 だが、もう遅い。

 もう、どうにもならない。


 ロキは、馬だった男に刺し貫かれた。

 ロキの悲鳴が響き渡る。

 巨人はもとより、神々は誰も助けに来ない。

 このいたずら者の巨人を、誰もが懲らしめて欲しいと思っていたからだ。

 さらに、今、神々の領土は、トールの帰還と脅威の消滅に湧いている。

 誰も、ロキに注意を払う者はいなかった。



 ■とてもお見せできないシーン■

 ※しばらくご自分の想像のみでお楽しみください。



 しばらくの間、ロキをもてあそんで、スヴァジルファリは帰っていった。

 雄馬のたくましいひづめの音が遠ざかっていく。

 ロキは、ゆっくりと身体を起こした。

 頑丈な巨人の身体と言えど、馬相手の行為は厳しかったようだ。

 身体の節々が痛い。


 とりあえず、早く身体を洗いたい、と思ったが、その前にとある存在に気が付いた。

 身体の側に、小さなぬくもりがある。

 ロキは目を丸くした。

 自分でもよくそんな体力が残っていたと思ったが、素早くそのいきものに駆け寄る。

 そっと抱き上げて、ロキはにやりと笑った。


「これは珍しい……オーディンに献上すれば、おれの失態も帳消しだな」


 ロキは子馬を小脇に抱えると、森の奥へ消えていった。

 身ぎれいにして、服も探して、あの馬に見つからないうちにアースガルズに戻らなければ。

 そんなことを考えながら。

 子馬が嬉しそうに、ロキに耳をこすりつけた。


◆神々の戦いと、ロキの帰還

※時系列的には、丸印(●)のあたり



 戦いは、神々の圧勝でした。

 東方から帰ってきたトールがミョルニルで山の巨人を一蹴、否、ぺちゃんこにしてしまったからです。

 トールは倒すべき敵がいたことを、神々からの土産だと言って喜びました。


「わざわざ楽しみを残しておいてくれたのか。おれは嬉しい」


 別段、トールのためという訳ではありませんでしたが、機嫌のいい人を正す理由もありません。

 神々はトールと今宵の勝利を祝って、祝賀会を開きました。

 ぜいたくなご馳走や酒を用意して、一晩中呑み明かしました。

 次の日、比較的呑まなかった若い神々が、二日酔いを免れて、片づけをしていました。


「あれ、酒が残ってる」

「トールも帰って来ていたのに、どうしてだろう?」

「誰か大酒呑みがいなかったんじゃないか?」

「そんなの誰が――あ!」


 ロキがいないことに気が付いた神々は、不思議がりました。

 今宵の祝賀会が開催できたのも、もとを正せばロキが雄馬を誘惑し、巨人のたくらみを潰すことができたからです。

 自尊心の高いロキなら、真っ先に自慢しに来るはずでした。

 はて、今度は何を企てているのやら。

 神々の懸念をよそに、ロキはしばらく帰ってきませんでした。


 ロキがアースガルズに顔を見せたのは、あの日から一年経ったあとでした。

 それはちょうど、神々が残り十個の石を切り出し、二十個の石を積み上げ、城壁が完成したのと同じぐらいの時期でした。

 その頃、アースガルズ近くの草原に、美しい栗毛の馬がいると噂になっていました。

 何人もの神と巨人と人間が挑戦し、姿も捉えられぬまま、帰ってきます。

 やがて、そんなものは誰かの幻だったのだ、という話すら出てきたころ、ロキは灰色の毛並みの子馬を抱えて、帰ってきたのです。


「ロキ、いままで何をしていたんだ?」


 仲の良いトールの投げかけにも、ロキはだんまりでした。

 黙ってオーディンに子馬を預けると、そのまま口を閉ざしました。

 これには、口が空気のように軽いロキには珍しいことでした。


 オーディンは、足が八本ある子馬を受け取り、愛情深く育てました。

 始めは、いなくなった母親を探して、子馬はずいぶん鳴きましたが、やがてそれも少なくなり、いつしか父親譲りの駿馬に成長しました。

 母親の美しい毛並みと、父親の頑健な身体を持つその馬の名は、スレイプニルと言いました。


 スレイプニルの素晴らしさは、多くの人が口にしました。

 しかし、スレイプニルの親が誰であるか、ロキの前で話した人はいません。

 神も、巨人も、人間も、誰一人として。


 そして、ロキは決して、あのときの屈辱を忘れませんでした。

 誰かが城壁の完成に関する話をしようものなら、ロキは徹底的な嫌がらせをしました。

 あの雄馬――スヴァジルファリにも復讐をしたか、それは分かりません。

 何故なら、ロキの報復を恐れて、誰もが口をつぐんだせいで、今後、北欧神話にスヴァジルファリの名は登場しないからです……。


本編すべてを読みたい場合は、作品トップのシリーズのリンクから、『アースガルズの男ロキ、母親になる』をお選びください。


活動報告にあとがき的な裏話あり。

https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/273207/blogkey/2314280/

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