【簡易版】アースガルズの男ロキ、母親になる
自由な想像でお楽しみください。
◆北欧神話 城壁の話あらすじ
神々「城壁欲しいなあ、誰か造ってくれないかなあ」
男「いいよ」
↓
ロキ「男に城壁を途中まで作らせて、あとはおれたちで完成させよう」
神々「いいね」
↓
神々「城壁が完成してしまうぞ、何してるロキ、殺すぞ」
ロキ「よし分かった、馬を誘惑してなんとかしよう」
※男の所有していた馬が、城壁用の石を大量に運んでいた。
↓ ★このへん
神々「やーい、失敗したなー!」
男「だましたな、女神フレイヤを寄こせ!」
トール「でりゃー」 ●このへん
ミョルニルどーん
実は巨人だった男は無事死亡
めでたしめでたし
◆ロキと馬の本番に至るまで
※時系列的には、星印(★)のあたり
戦いの音が聞こえてきた雌馬は、ハッと立ち上がる。
それまでの親しげな様子から一変、雄馬はそれを不審に感じた。
それでも、機嫌よく鼻を鳴らしながら雌馬に近付いた。
しかし、それもここまで。
何故ならば、雌馬と雄馬が接触する瞬間、雌馬の姿が変わったからだ。
背の高い、男の姿。
ハンサムな顔立ち。
そこに浮かぶ、どこか馬鹿にした表情。
愚かな雄馬に突き付けられた指。
北欧神話の神々は、誰もが特殊な才能を持っている。
トールが雷を操り、オーディンがオオガラスを操りさまざまな情報を手に入れるように。
ロキには、どんな生物にだって自由に変化できる能力があった。
さて、もうお分かりかと思われるが、雌馬の正体を明かそう。
美しい栗毛の馬は、ロキだったのだ。
「馬鹿な馬め。これはおまえと主人の男を引き離し、城壁を完成させないための罠だったのさ。主人ともども騙されやがって、ああ、いい気味だ」
ロキは顔面に迫る馬に対して、嘲笑いながら自らの功績を称えた。
そのまま森を去っていこうとしたロキだったが、何者かに邪魔をされた。
邪魔立てしたのは、雄馬だった。
雄馬はロキの上着を引っ張って、ロキの帰還を阻止していたのだ。
振り返ったロキを、馬は強引に引きずり倒し、見下ろした。
馬の四肢に囲われ、逃げられなくなったロキは、必死に頭を回す。
「いったい、なにが――」
雄馬は地面をひっかき、鼻息を荒く鳴らした。
発情している証拠だ。
すわ、獣姦の危機かと、小鳥たちが驚いて羽をばたつかせた。
しかし、心配ご無用、ここは神々の住まう世界。
十五メートルの巨人が人間に変装し、大男トールがフレイヤに変装する世界である。
馬は、人間の男に変化した。
「おいおい、いったいどういうつもりだ? おれをとっ捕まえておくなら馬のほうが、都合がいいんじゃないのか。そんなこと、獣のおまえには分か――」
「オレはどっちだっていいさ。おまえを得ることができれば」
「あんだって? おいおい、おまえもおれの頭が欲しいクチか? おれの頭は上等だぜ? いい家具ができるだろう」
ロキは冗談を口にする。
いや、冗談ではなく、本当に欲しい連中が過去にいたのだが。
しかし、スヴァジルファリは違うと首を振る。
「おまえが欲しい。おまえの身体が」
「……正気か? 今のおれは雌馬じゃないんだぞ? そんなもん犯して何になるって言うんだ。人間や巨人の女なら、いくらでも紹介してやるぜ」
「できれば美しい栗毛色の雌馬が欲しいが、無理は言うまい。今得られるのはおまえだけなのだから」
ロキとスヴァジルファリの会話が進めば進むほど、馬だった男の視線は鋭くなった。
ロキは頭をフル回転させて、なんとか逃れようとするが、うまい考えは浮かばない。
スヴァジルファリの身体が近づいた。
いよいよもって、ロキは神々をたぶらかした代償を、自らの身体で支払わなければならなくなった。
「い、いやだ! 冗談だろ!?」
ハンサムが故に、ロキは女性に不自由していない。
このおれが、男のはけ口として使われるなんて、そんな馬鹿な!
ロキにとってこの事態は、到底認められることではなかった。
「か、神々は生殖しなくても神を生めるんだ! 子どもが欲しいなら、性行為にこだわる必要はない!」
ロキは、巨人の母と巨人の父を持つ子どもだ。
にもかかわらず、神々であるほうが都合がいいと思って、自らを偽った。
「嘘をつくな、巨人の息子。その狡猾さ、人を騙す力、自信過剰な性格。どれも巨人の特徴そのものだ」
一瞬で見破られたロキは、ちゃんと次の策を考えていた。
今度は、巨人であるということを逆手にとって、相手を説得するのだ。
「原初の巨人は、寝ている間に、身体のさまざまな場所から子どもを産んだという!」
「おまえは原初の巨人なのか? 違うだろう?」
「今の神々は、原初の巨人から生まれた者たちだ。オーディンにすら、3/4は巨人の血が入ってる! そして、おれたちは原初の巨人の孫から生まれた存在だ。おれたち巨人に、不可思議な力が宿っていたって、なんらおかしくない!」
スヴァジルファリは、ロキの主張をしばらく咀嚼した。
それから、ロキにさらに顔を近づけて微笑んだ。
馬であったなら、大きく鼻を鳴らし、尾を大きく揺らしていたことだろう。
「オレが欲しいのは、子どもではなく、行為そのものだ」
「……な、あ、ああっ……!」
ロキは自らの失態を悟る。
だが、もう遅い。
もう、どうにもならない。
ロキは、馬だった男に刺し貫かれた。
ロキの悲鳴が響き渡る。
巨人はもとより、神々は誰も助けに来ない。
このいたずら者の巨人を、誰もが懲らしめて欲しいと思っていたからだ。
さらに、今、神々の領土は、トールの帰還と脅威の消滅に湧いている。
誰も、ロキに注意を払う者はいなかった。
■とてもお見せできないシーン■
※しばらくご自分の想像のみでお楽しみください。
しばらくの間、ロキをもてあそんで、スヴァジルファリは帰っていった。
雄馬のたくましいひづめの音が遠ざかっていく。
ロキは、ゆっくりと身体を起こした。
頑丈な巨人の身体と言えど、馬相手の行為は厳しかったようだ。
身体の節々が痛い。
とりあえず、早く身体を洗いたい、と思ったが、その前にとある存在に気が付いた。
身体の側に、小さなぬくもりがある。
ロキは目を丸くした。
自分でもよくそんな体力が残っていたと思ったが、素早くそのいきものに駆け寄る。
そっと抱き上げて、ロキはにやりと笑った。
「これは珍しい……オーディンに献上すれば、おれの失態も帳消しだな」
ロキは子馬を小脇に抱えると、森の奥へ消えていった。
身ぎれいにして、服も探して、あの馬に見つからないうちにアースガルズに戻らなければ。
そんなことを考えながら。
子馬が嬉しそうに、ロキに耳をこすりつけた。
◆神々の戦いと、ロキの帰還
※時系列的には、丸印(●)のあたり
戦いは、神々の圧勝でした。
東方から帰ってきたトールがミョルニルで山の巨人を一蹴、否、ぺちゃんこにしてしまったからです。
トールは倒すべき敵がいたことを、神々からの土産だと言って喜びました。
「わざわざ楽しみを残しておいてくれたのか。おれは嬉しい」
別段、トールのためという訳ではありませんでしたが、機嫌のいい人を正す理由もありません。
神々はトールと今宵の勝利を祝って、祝賀会を開きました。
ぜいたくなご馳走や酒を用意して、一晩中呑み明かしました。
次の日、比較的呑まなかった若い神々が、二日酔いを免れて、片づけをしていました。
「あれ、酒が残ってる」
「トールも帰って来ていたのに、どうしてだろう?」
「誰か大酒呑みがいなかったんじゃないか?」
「そんなの誰が――あ!」
ロキがいないことに気が付いた神々は、不思議がりました。
今宵の祝賀会が開催できたのも、もとを正せばロキが雄馬を誘惑し、巨人のたくらみを潰すことができたからです。
自尊心の高いロキなら、真っ先に自慢しに来るはずでした。
はて、今度は何を企てているのやら。
神々の懸念をよそに、ロキはしばらく帰ってきませんでした。
ロキがアースガルズに顔を見せたのは、あの日から一年経ったあとでした。
それはちょうど、神々が残り十個の石を切り出し、二十個の石を積み上げ、城壁が完成したのと同じぐらいの時期でした。
その頃、アースガルズ近くの草原に、美しい栗毛の馬がいると噂になっていました。
何人もの神と巨人と人間が挑戦し、姿も捉えられぬまま、帰ってきます。
やがて、そんなものは誰かの幻だったのだ、という話すら出てきたころ、ロキは灰色の毛並みの子馬を抱えて、帰ってきたのです。
「ロキ、いままで何をしていたんだ?」
仲の良いトールの投げかけにも、ロキはだんまりでした。
黙ってオーディンに子馬を預けると、そのまま口を閉ざしました。
これには、口が空気のように軽いロキには珍しいことでした。
オーディンは、足が八本ある子馬を受け取り、愛情深く育てました。
始めは、いなくなった母親を探して、子馬はずいぶん鳴きましたが、やがてそれも少なくなり、いつしか父親譲りの駿馬に成長しました。
母親の美しい毛並みと、父親の頑健な身体を持つその馬の名は、スレイプニルと言いました。
スレイプニルの素晴らしさは、多くの人が口にしました。
しかし、スレイプニルの親が誰であるか、ロキの前で話した人はいません。
神も、巨人も、人間も、誰一人として。
そして、ロキは決して、あのときの屈辱を忘れませんでした。
誰かが城壁の完成に関する話をしようものなら、ロキは徹底的な嫌がらせをしました。
あの雄馬――スヴァジルファリにも復讐をしたか、それは分かりません。
何故なら、ロキの報復を恐れて、誰もが口をつぐんだせいで、今後、北欧神話にスヴァジルファリの名は登場しないからです……。
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活動報告にあとがき的な裏話あり。
https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/273207/blogkey/2314280/




