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第1話 別に旅立ちたくなかった朝④ ~愉快な夢~

 朝、目が覚める。あくびをしてベッドから起き上がれば、当然のように彼女がいる。


「ああ、セツナおはよう」

「おはようございますキール様」


 背筋を伸ばす。寝間着のままベッドから離れ、窓際に腰をかける。


「夢を……見てたんだ」


 空は青く雲は白く、街の景色はいつも通り。


「楽しい夢ですか?」


 彼女の問いに俺は微笑む。


「セツナがパンツ盗まれたってキレて仕方なく勇者とかいうサイコパス野郎にお願いに行ったら訳のわからない占い師が出てきて親父のパンツ食えって言われて食ったら食ったですごい魔法使えるっていう愉快な夢だよ」


 言葉にする、これはひどい。どこをどうとってもひどい。


「……寝ぼけているみたいですね」

「ああ、うんそうだね……朝食はある?」


 その答えは鼻がもう知っていた。淹れたてのコーヒーの香りは、心地よくこの部屋に充満している。


「とりあえず朝のコーヒーと」


 カップを受け取り少し啜る。喉に染み込む適温が心地良い。ただ少し腹が減ったから、何かつまむものでもあれば良いな。


 察したのか、セツナが皿を差し出してくれた。相変わらず彼女は気が効く自慢のメイドだ。夢の中では少し違っていたけれど。


 外の景色を眺めながら、それを掴んで齧る。齧っちゃったよ。俺は馬鹿かな。


「ロールパンツです」


 それを皿に戻し、首筋に手をやる。もはや外す余地の消えた首輪がそこにまだあったから。


 冷めない悪夢の始まりだと、間抜けな俺はようやく気付いた。

◆◆◆今回の獲得スキル◆◆◆


レジェンドスキル:魔王

アーツ:地獄の種火 地獄の篝火 地獄の業火

    ミニバン ビッグバン YOUBAN

    落雷 豪雷 天雷

    気合ため 気力ため 生命力ため

    一撃 連撃 無限連撃

    回避 漫然回避 完全回避

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