表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
HandG  作者: 竹内緋色
5/5

EX ビアンカか、フローラか。それが問題だ。

EX ビアンカか、フローラか。それが問題だ。


「ほら、いいもの見つけてきたぜ。」

 俺は自慢するようにクロにそれを見せた。それは今やちょっとだけ希少価値の高くなったプレイステーション2だ。

「これで一緒に遊ぼう!」

「うん!」

 結局さっきまで大人ぶっていたけどクロは子どもなのだ。珍しいものとかそういうのに弱い。

「でも、それって何?投げて遊ぶの?それとも叩く?」

「そんな原始時代の猿のようなことをしてはいけません。」

「誰が猿だぁ!」

 クロは俺に飛び掛かってくる。まだ包帯のまかれている顔を触られたら、たまったものじゃない。痛みで本当に数センチだけ飛び上がってしまう。だから、足を使って必死にクロを防ぐ。

「足臭い。」

「最近は毎日風呂に入っているぞ。」

「当たり前じゃん。」

 年下に肩をすくめて呆れられてしまった。年上として恥ずかしい。

「金色のバカは結局金色のバカのままなんだね。」

「褒めるなよ。」

「うん?貶してるよ。当然。」

 俺はやるせなくなって部屋の隅に退避した。

「ほら、またそうやって逃げ出すんだから。結局あの後、学校に行けなかったんでしょ?」

「むしろ、家の外から一歩も出てないぜ。」

 俺は親指を上に立ててぐーをする。クロが死んだ魚のような目で俺を見てきた。

「もう。明はダメなんだから。」

「まあまあ。怒るなって。」

 そう簡単にヒキコモリが治ったら、全国のヒキコモリの皆さんに申し訳ない。そもそもに、クロと遊ぶ以上の楽しみが外の世界に待っているとは思えない。結局学校に行くことのなかった俺を家族はやっぱりかと呆れた顔をして同時に大きなため息をついた。ケガの件もあるので少し多めに見てくれているようだった。

 クロの火葬は無事に済んだ。

 もしかしたらクロが消えてしまうかも、と思ったけど、そんなこともない。クロ曰く、

「私はちょっと幽霊とは違うんだよね。」

 とのこと。俺には違いはちっとも分からない。

 それと、クロは赤嶺の家の中だけなら自由に動けるようになった。なんでなのか分からない。クロ曰く、奇跡のようなものらしい。時々家族が隠れて何をしているのかを言ってくるので、あまり覗きをしないように言ってある。

「それより、これはゲーム機だ。」

 俺が子どもって言っても今も子どもだが、とにかく小さいころまで現役だったゲーム機である。

「そんなもの、どこから見つけてきたの?」

「リビングからリングが出てきたのは、そうか、知らないのか。」

「話には聞いてるけど。」

「その後、俺はガラスを割ってそこらの修理とかやらされたわけだ。その後にリビングの脇にある押し入れを整理しろってこき使わされて、偶然にこれが出てきた。」

 このゲーム機は俺のではない。父親のものだった。無断で持ってくるのはよくないのだろうけど、押し入れにしまってあったということは、使わないということだろう。

「これ、どうやって遊ぶの?」

「待ってろよ。」

 俺はテレビにコードを繋ぐ。そして、テレビのスイッチを入れ、チャンネルを切り替える。テレビをつけた瞬間、ニュース番組がやってて、なんか物凄い富豪が死んでその遺産が全部ボランティアに寄付されたとか言っていた。でも、俺には遠い世界のことなので少しも気にはしなかった。

「あ。」

 ゲームの電源を入れた後に気が付く。ソフトを入れていなかった。押し入れの中にソフトは見当たらなかったのだ。

「すまん。クロ。ソフトがないからゲームできない。」

「ええ!?」

 クロは物凄く不満そうな顔をする。そういう時は俺に八つ当たりしてくるので注意が必要である。クロ取り扱いマニュアルでも作ろうかな、と思っていると、ゲームが動き出した。

「なるほど。中に入っていたのか。」

 初めから中にディスクが入っていたようだった。俺はメモリが刺さっているか確かめる。大丈夫。問題ない。

「ゲームできるの?」

「ああ。」

 しかし、なんのゲームが入っているのか分からなかった。ギャルゲとか入っているととても気まずいし、乙女ゲーが入っていたら、少し父さんと遠縁にならなければならない。もしかしたら父さんの方が引きこもってしまうだろう。すると、聞き覚えのある音楽が聞こえたのでほっとする。

「なんだ、ドラクエか。」

「面白くないの?」

 パライソス星のお姫様はドラゴンクエストという定番RPGも知らないようだった。

「さあ。俺もドラクエってやったことないんだよね。」

 RPGはほとんどやったことはなかった。あって、小学校の頃にポケモンをやっていたくらいだ。

「まあ、クロ。やってみろよ。」

「うん?マウスとキーボードはどこだ?」

「これはこのコントローラを使うんだよ。」

 俺はコントローラをクロに手渡した。

「どうやって使うんだ?」

「持ち方が逆だ。」

 俺はクロにコントローラの使い方を教える。

「ほう。なるほど。イエスがマルでノーがバツなのだな。」

 クロは冒険の書を作り始めた。

「うわあ。文字がいっぱいだあ!。」

「落ち着け。素数を数えろ。」

「分かんないよ。」

「とにかく、適当に名前をつければいいんだ。トンヌラとかどうだ?」

「絶対に私をバカにしているよね。」

 いい名前だと思ったのに。

「絶対にクロ。クロって言ったらクロなの。」

 クロはコントローラの使い方に苦心しながら、やっと二文字書くことができた。

 そして、冒険は幕を開ける。

「ドラクエってドットの絵ってイメージだったんだが、すごく立体的だな。」

 PS2なのだからそうなのだろう。ファミコンとは違うのだ。

 主人公の名前を決める算段になった。父親がトンヌラというのはどうだ、と言った。

「もしかして知ってたの?」

「いや、全くの偶然なんです。」

 なんだかすごく責めれれている気がした。主人公の母親はトンヌラもいいけど、クロというのはどうかと提案する。トンヌラで良かったのだろうか!

 そして、場面は急に船の中。

「一体どうしちゃったの?」

「さ、さあ。」

「ママは一体どうしちゃったの?さっきまであんなに一緒だったのに。」

 俺はクロの顔を見る。泣き出しそうだった。クロの境遇を考えると当然の反応だと言える。

「大丈夫だ。クロにはパパがいる。俺もいるさ。」

「ちゃっかり自分を勘定に入れてるのね。」

 結構感動的な場面だと思ったんだけど。視聴率20%はとれたと思ったんだけど。

「それより、どうして主人公が男なの?なんでおち×ち×生えてるの?」

「いや、女の子がそんなこと言っちゃダメだよ。思わず脳内でフィルタかけたから。」

 最近のゲームだと主人公の男女を選べるが、昔のものは基本的に男が主人公だった。

「もしかしたら女でしたというオチもあるかもしれないぞ。FFみたいに。」

「えふえふ?」

「ドラクエと並ぶ日本の代表的なRPGだ。」

 そっちもやったことはないのだけれど。

「ちなみに、樽とか壊せるぞ。タンスも覗き放題。」

「男の妄想を引き立てますな。」

「一体どこでそんな言葉を覚えるんだか。」

 一応は分かっていると思うが、俺はクロに注意しておく。

「いいか。勝手に人様の家に入って、押し入れを覗いたり、ツボを割ったりしたらいけないぞ。」

「そのどれもできないよ。」

 それをすっかり忘れていた。俺はクロを普通の女の子と勘違いしていたのだった。

「ごめん。」

「謝るな。バカ。」

 クロは家の中を自由に行き来できるようになったけど、依然として、俺以外の人間には見えないようだった。そして、やはり俺以外の人間が見ているところではクロは物に触ることができない。例外として、俺だけはクロに触れるし、クロも誰かが見ている時でも俺にだけは触れる。

「そろそろ冒険が始まるな。」

「空ってこんなに青かったんだね。」

 ほとんど空を見ることのなかった少女が言うと、とても深い言葉のように思えた。俺はいつか、クロが家の外にも出られるようになればいいと思った。そうすれば、ゲームなんかより色んな冒険をさせてやれる。


 主人公は幼なじみに出会う。名前はビアンカ。金髪の女の子だった。

「ねえ、敵、強くない?」

 ビアンカとともに幽霊屋敷に行くことになったのだが、道中の敵が思いのほか強い。

「あ。負けちゃった。」

「これはレベリングが必要だな。」

「レベリング?」

「つまりは、レベル上げが必要ってこと。」

「どうすればいいの?」

「モンスターを倒してレベルを上げるほかない。町の近くのモンスターを狩った方がいいな。そっちの方がすぐ回復できるし。」

「えー。早く進みたい。」

「でも、負けまくるぞ。あれ?負けてもセーブしたところからじゃないな。うん?ちょっとクロ。貸せ。」

 俺はクロから無理矢理コントローラを奪う。

「ああ。やっぱり。」

 やり直しではないが、お金が半分になっている。町で買える最強の装備を持っておかないとこの先大変そうだった。ああいう城とかにはボスがいるのが定番だからな。

「頑張ってレベルを上げないと。ほら。一応セーブしておけ。それと、一回全滅したらやり直しだ。」

「ええ!?嘘でしょ?」

「ゲームの電源を切れ。じゃないと一生装備が買えない。」

「うぅ。」

 昔のゲームは少しシビアなようだった。プレステ2は比較的新しいとは思うけど。

「面倒臭い。同じモンスターばっかり。」

「ほら、今回復しないと。ああ、負けた。やり直しだ。」

「金色のバカって本当に夢中になると手が付けられないわね。」

 クロは呆れていた。

「そんなに言うなら、明がやって。」

 クロはとうとう俺にコントローラを渡してきた。

「よし。クロに代わって俺が世界を救ってやる。」

「オー、ガンバレー。」

 クロはゲームに興味を無くして、部屋から出て行ってしまった。


「なるほど。こいつは炎が弱点と。逆にこいつは吸収するな。コイツは素早さが早いと。とにかく、魔法を使ってくるやつを優先的にやっつけないと。」

 俺は攻略をノートに書き始める。こういうのは最近はネットで見ればなんとかなるんだが、俺はそういうのはしたくなかった。

「そうだ。もし負けた時のためにマップを描かないとな。最短ルートとアイテムがどこにあるのかをメモメモっと。」

「金色のバカ。ご飯だよ。」

 最近はクロがご飯になったら呼びに来る。でも、俺は今はそんなことをしている暇はない。

「俺は世界を救うのに忙しいんだ。」

「もう!明のバカ。それじゃあ、前と変わんないじゃん。」

 クロは俺を無理矢理にでも引っ張っていこうとする。でも、俺には世界を救う使命があるんだ。


「私がどこかに消えてもいいの?」


 クロはそんな物騒なことを言った。俺はぎょっとして、クロを見る。クロは俯いていて、肩をヒクヒクさせていた。泣いているみたいだった。

「すまない、クロ。ご飯はみんなでちゃんと食べるから。泣くなよ。どこにも行かないでくれよ。」

 すると、クロは俺に笑顔を見せた。頬は少しも湿っていない。つまりはさっきのは嘘泣きということだった。

「てめえ。嘘泣きしやがって。」

「さあ、行くよ。」

 俺は仕方なくご飯を食べに下の階に降りた。


 真っ当に飯を食って、真っ当に風呂に入って戻ってきた。以前の俺では考えつかないほどの真っ当な生活だった。

「部屋の外に出てよかったでしょ?」

「そうかな。」

 でも、結局家族でずっとテレビを見たりはしないのである。でも、これは思春期とかそういうものではないのだろうか。

「そうやって少しずつ学校に行けるようになればいいのさ。」

 歌うように銀色の少女は言った。

「お前は俺よりヒキコモリじみてるけどな。」

「金色のバカと一緒にするな。」

 クロはボコスカと俺に殴りかかる。それほど痛くはないのだが、うん、痛い。筋肉とかない俺にとっては凄く痛い。

「お前もいつか自由になれるといいな。」

 俺と違ってクロは物理的に外に出られない。

「バカ。」

「どうして怒ってるんだよ。」

「明のバカ。もう知らない。」

 女の子の心は度し難い。というか、男の娘というオチはないだろうか。

「ないよ!」

「だから、心を読むなって。」

 少々厄介な性質を持っている同居人だった。

「ぱそこんのゲームはやらないの?」

「そういえば、すっかりやっていなかったな。」

 でも、今はドラクエである。主人公が子どもであるのが面白い。でも、きっと子どものままでお話は終わらないだろう。成長過程がどうなるのかハラハラなのである。

「さて、最強装備もそろったし、行くか。」

 いじめられているキラーパンサーを救うため、城の幽霊を退治しなければならないのである。ダンジョンに入るとなると、回復は見込めない。主人公が殴り合いができ、かつ、回復魔法を覚えているので、やりやすいといえばやりやすい。先手が取れればいいが、それほど速さは見込めないのだ。


「ねえ、私、眠いんだけど。」

「じゃあ、寝ろよ。」

 所々キツイところはあったが、なんとか城をクリアできた。すると、次は突然妖精の国に行くことになったのだ。

「えへへ。エルフ耳っていいよなあ。それと羽って。もう、萌え死ぬ。」

「もう、寝るからね。」

 クロは電気を消した。仕方がないので俺は音量を落とす。別にフルボイスではないから問題はない。俺は寝るつもりはなかった。だって、妖精の国が一大事なのだ。

 クロはあっという間に寝てしまったようだ。ある意味で羨ましい。まだ子どもだからすぐ寝てしまうのだろう。時々すごく心をくすぐられるような寝息を立てている。うん。ある意味いいのだが、でも、ちょっと困ってしまった。


「パパスさあぁぁぁぁん!」

「うるさいんだけど。」

「だって、パパスさんが、父ちゃんが死んじゃったんだぞ!」

 主人公の父親は主人公をかばって死んでしまった。敵の攻撃に耐えて耐えて耐えまくり、ボコボコにされた後、挙句の果てに魔法で跡形もなく焼かれてしまった。死体も何も残らない。

「そんなのって、ありかよ!」

 俺の目から涙がこぼれてきた。あれほど強くって、きっと彼が勇者なのだと思っていた。勇者を探す冒険をしていたけど、俺にとってはパパスこそ、父ちゃんこそ真の勇者だったのだ。

「俺が、俺がもっと、強ければ!」

 パパスが死ぬことはなかった。俺のことなんて放っておけば、パパスは勝てたはずなのだ!

「落ち着いて。金色のバカ。ゲームだよ。」

「ゲームだろうが現実だろうが俺にとっては一緒なんだよ。」

 涙が止まらない。とめどなく溢れてくる。

 すると、クロは俺に抱きついてきた。いつものじゃれている感じではなく、子どもを愛するように愛おしい抱擁だった。

「明は優しいんだね。」

「うん。」

 小さな子にあやされて、バカみたいだ。それに、ここで冒険は終わらないのだ。

「きっと誰にだって別れがあるよ。でも、それでも主人公は前に進み続けてる。パパスさんは明に勇者を探してくれって望みを託したんでしょ。なら、パパスさんの願いを叶えなきゃ。」

「へへ。そうだよな。」

 俺は前を向いてテレビに向かう。俺が諦めたら世界は救われないんだ。

 でも、現実は残酷だった。助けに行ったヘンリー王子とともに俺は奴隷となって成長していた。

「そんなの、ありかよ。」

 現実は残酷だ。こんなの、子ども向けじゃない。こんな中育って、主人公とヘンリーはどんな気持ちだっただろう。

「とても辛かったはずだよ。でも、まだ諦めてない。私には真似できなかった。ゲームは違うね。」

「そんなことないさ。」

 俺は戻ってきたクロを見て、少し成長したと思った。その姿を見て、俺は置いて行かれないように必死でクロにしがみついている。

「お前は大きくなったよ。大きくならないといけないところはちっちゃいままだけど。」

「余計なお世話だ!」

 結構本気で殴られる。まあ、本当に余計なことを言ってしまった。

「お前は辛い現実を乗り越えたんだ。だから自信を持っていいと思うぞ。」

 その点、俺はまだ、家の外から出るのも難しい。

「明も辛い現実を私なんかより乗り越えてるよ。だから、胸を張って外に出てもいいと思うな。」

「まあ、せめて顔が元に戻るまでここにいたいけど。」

 食事をとるのも一苦労なのだ。顔の腫れは徐々に収まり始めているものの、日常生活を送るためにはもう少し休息が必要そうだった。

「もうすぐ朝ご飯じゃないの?」

「今日は日曜だから、みんな起きるのが遅いんだ。」

 逆に日曜だけは俺は起きるのが早かったりする。日曜はアニメと特撮のオンパレードだからだ。最近はゲームばかりなので見ることはなくなったけど。

「早く奴隷生活からおさらばするぜ。」

 俺はゲームを進めていく。その姿をクロは神妙な目つきで眺めていた。クロも色々思うところがあるのだろう。クロの過去を思いやると仕方のないことである。


「そろそろご飯。」

 開け放たれている扉から天姉が眠たそうな目で俺を見た。

「そんな時間か。」

 奴隷生活から抜け出し、俺は本格的に冒険を再開したのだった。レベル上げはかかさない。人はコツコツと石橋を叩いて渡らなければならないのだ。

「ほら、明。行かないと。」

「そうだな。」

 RPGは途中で中断できるからありがたい。でも、寝ずにやってしまう中毒性はどうしてなのだろうか。

「もしよかったら、レベル上げしといてくれよ。」

「うん。パパスさんの悲劇を繰り返さないために私は強くなるから。」

 本当に成長したな、と俺は思った。

 ふと、クロの成長した姿を思い浮かべてみる。すると、黒い衣装に銀髪碧眼のあの少女が目に浮かんだ。そういえば、顔立ちもクロとよく似ていた。

「何ぼさっとしてんの。早く行くよ。」

 俺は天姉に急かされて、朝食を食べに下に降りていった。


「いやあ、まさか、マリアとヘンリーが結婚するなんてね。」

 俺とクロとそしてちゃっかり天姉が俺の部屋にいる。そして、楽しそうに俺がゲームをしているのを眺めている。クロは天姉が見ているとゲームに触れないので、不満そうだった。

「メタスラでレベル上げしないの?」

「メタスラばっか出てくるところがないんだよ。所々ちょいちょい出てくるんだけど。」

 ドラクエの定番中の定番であるメタルスライムに出くわす機会もあった。経験値が貰えることをよく知っていたので、頑張って探して戦うが、出現率の悪さと倒しにくさで俺は堅実に他のモンスターを倒すことを優先する。だって、全然攻撃が効かないし、すぐ逃げちゃうんだぜ。

「まるで恥じらいを持った若い娘っこのようだな。」

「その若い娘っこがアンタだろ。」

 老人のようなことを言う姉に俺は言った。

「姐御のようになるにはどうすればいいんですか!」

「何を聞いてるんだ。」

「クロは何か言っているのか?」

 クロの声は天姉には聞こえない。

「いや、天姉みたいになるにはどうすればいいのかって。」

「手っ取り早いのは精神と時の部屋で修行することだが、まあ、目からビームくらい出せればすぐに私のようになる。」

「お前は何者なんだ。」

 スーパーサイヤ人か。スーパーサイヤ人でも目からビームは出せないぞ。

「なるほど。修行するっす!」

「クロが真に受けたじゃないか。」

 すると、天姉ははっはっは、と高らかに笑った。最近天姉はよく笑うようになった。

「ちなみにクロはどこにいる。」

「俺に抱きついてお兄ちゃん大好きと言ってる。」

 クロに蹴飛ばされた。クロは俺の後ろでテレビをずっと見ていた。

「キモいな。弟。」

 汚物を見るような目をされる。消毒か?消毒されてヒャッハー!!なのか?

「そう言えば、クロってメタスラに似てるよな。仲間になるんかな。」

「私はあんな間抜け面じゃない!」

 クロはやっぱり襲ってくる。

「いや、可愛いだろ。」

 ドラクエ5ではモンスターを仲間にできて、俺は始めに仲間になった普通のスライムを育てている。カジノではレースにも参加させられる。

「そうかなぁ。そんなにかわいいかなぁ。」

 クロは頬に手を当てて、辺りを楽しそうに動き回っている。物凄く誤解してきゃっはうふふしている。

 クロに相手している暇はないので、俺はゲームを進めた。

「うん?」

 俺たちはかつての村でパパスの遺産を見つけた。パパスに助けられたこの命を思い、胸が熱くなった。そして、かつて助けたキラーパンサーを正気に戻すことに成功する。涙の再会だった。キラーパンサーとはパパスとの永遠の別れの際に離れ離れになったのだ。

 俺は今、勇者しか扱えないという伝説の装備を探して世界を放浪としていた。そして、ある街の富豪がその装備を持っているといううわさを聞きつける。その装備を手に入れられるのは富豪の娘と結婚したものだけだ。富豪の娘と結婚するためには二つのアイテムを手に入れなければならない。そのアイテムの一つを手に入れ、もう一つのアイテムを探しに出た時だった。とある村で幼なじみのビアンカと再会した。

「ビアンカじゃねえか!」

 すっかり死んでいるものだと思っていたビアンカに再会する。

「すっかり美人になって。」

 金髪の少女ビアンカは子どもの頃よりもたくましくなって俺の前に現れた。

「よし。また一緒に冒険しよう!」

 俺たちは一緒に冒険を始めた。だが、なんだかビアンカの様子がおかしい。

「これはアンタに気があるわね。」

 母親の声がして、振り向く。そこにはやはり母親がいた。

「どうするの?アンタ、フローラと結婚しなきゃいけないでしょ。」

 フローラとは富豪の娘である。

「実はね、最初の方でフローラとアンタは出会ってたのよ。船でさ。忘れちゃった?」

 そう言えば、青髪の少女と出会っていたような気もする。

「どうにもこうにも、俺には使命があるし、女にはかまってられねえんだよ。」

 だが、現実は無情である。

 とうとう、ビアンカかフローラ。どちらと結婚するか迫られてしまった。

 主人公のことをフローラに譲ろうとするビアンカ。

 でも、俺は――

「やっぱりフローラだな。」

「なんで!」

 物凄い怒声が響く。

 開け放たれた扉から乃木が現れていた。

「どうして乃木が?」

「明くんがフローラを選ぼうとするからでしょ!」

 理由になってねえ!

「幼なじみをないがしろにしちゃダメだよ!そんなことしたら人間の屑になっちゃうよ!」

 乃木は俺のそばに寄ってくる。

「ね?明くんはとっても優しい男の子だったでしょ?思い出して?幼なじみを泣かせるような子じゃないよ。」

「待て。」

 心揺れる俺に言ったのは天姉だった。

「清楚なお嬢様と結婚した方が幸せではないか。幼なじみと言っても、少しの間しか共に行動していない。」

「お姉ちゃんはビアンカの良さが分かってない!」

 いつの間にか大地までいる。

「ママもビアンカ派かな。」

 ビアンカ派とフローラ派で大陸が別れたようなありさまだった。

「私はフローラ。」

 クロは俺の服を引っ張って、清楚に言った。

「お金のために結婚なんて間違ってる。」

「お金が人を一番幸せにする!」

 物凄く言い張ってる。

 俺は仕方なく、ルドマンにした。

「どうしてルドマンに話しかけるの?お兄ちゃん、もしかして、ルドマン派なの?」

「バカ。俺は独身だ!ずっと独身でいる。」

「明くん。まさか脳内妹と結婚するんじゃ。」

「教会で結婚したいな。」

「クロ。勝手に未来予想図を立てるんじゃない。後な、若いころに付き合ってたからって、結婚したりしないからな。ああいうのは一時の気の迷いで、ただの遊びだ。」

「明くん、サイテー。」

「童貞の極みだな。」

「お兄ちゃん、どうてー。」

「見合い相手、ブスしか紹介しないから。」

 ひどい言いようである。なら、もうゲスの極みでいくしかない。

「フローラを嫁にして、ビアンカを愛人にする。きっとビアンカなら俺のことを受け入れるさ。」

 すると、一同にボコボコにされた。


「キミはまたここに来たのか。」

「来たくて来たんじゃねえよ。」

 黒い衣装に身を包んだ銀色の少女が目の前に現れた。

「ビアンカか。フローラか。それが問題だ。」

「お前もそれかよ。」

 俺はもう、いい加減飽き飽きしていた。

「俺は独身がいい!ずっと一人がいいんだ!」

「バカやろう!」

 思いっきり怒鳴られる。

「人にはな、いつかどちらか決めないといけない時が来る。それでもキミは逃げるのか。そんなんだから、女たちはキミをあの世送りにしたんだ。」

「え?俺死んでるの?」

 そっちの方がよっぽどショックなんだが。

「残念ながら、誠に遺憾なことに死んでない。」

「さっき舌打ちしたよね。」

「細かいな、キミは。そんなんだから、一生童貞なんだ。」

「俺、一生童貞なのかよ。」

「ちなみにボクはビアンカ派だ。というか、ビアンカにしなければ殺す。ここまでビアンカとの物語を進めておいてサイドストーリーに行くとか、マジであり得ない。」

 それだけ言うと、少女は霧のようにどこかに消えてしまった。


「なんと。この私が好きと申すか!」

「何言ってるんだ、親父。」

 とうとう、父親が乱入してくる。これ以上は誰も出てこないからある意味で安心だ。

「メイドには話しかけたか?」

「メイドだと!?」

 それは盲点だった。メイド属性は神なのだ。

「って、おばちゃんじゃんえかよ。」

 おばちゃんはない。流石にない。

「さあ、早く決めなさい。じゃないとアンタは一生童貞のままよ。」

「どっちにしろ童貞だろうが。」

 結局のところ、俺は――

「ちなみに、DSではデボラという嫁も出現するぞ。」

「なに?その出血熱みたいなのは。」

「あんなケバイ女を父さんは選んだの!?」

 今度は父親が集中砲火を受けた。

 ヘンリー。俺もマリアと結婚したかったよ。シスターも最高だよな。


 土居四葉(よつのは)は赤嶺家の前に佇んでいた。赤嶺家に入った幼なじみを待っているのだ。

 四葉は赤嶺家を見上げる。

 気味の悪い家だった。

 この世ならざるものが存在していることは明白だった。

「いつか、そいつを滅ぼさねばならんな。」

 それが四葉の使命だった。

 今は家にも外の世界にも悪意はない。地縛霊のようだった。しかし、そういう霊は例外なく悪霊に姿を変える。その前に消滅させる必要があった。

「四葉ちゃん。待った?」

「何をしてたんだ。」

 四葉の幼なじみの乃木ココアが赤嶺家から出てくる。乃木が入ったところで家に問題はなく、安心はしていたものの、少しでも変化があれば四葉は乗りこむつもりで準備していた。

「いやあ、ビアンカかフローラかで白熱してて。」

「早く帰るぞ。」

「ちなみに四葉ちゃんはどっち?」

「デボラ一択。」

「ええ!?出血熱みたい。」

 デボラにはデボラの良さがあるのだ。

「ちなみにあのバカはなんて?」

「フローラを嫁にして、ビアンカを愛人にするって。」

「クソだな。」

 四葉はもう一人の幼なじみの顔を思い出し、不快感を覚える。昔からそいつのことが嫌いだった。

「それより、甘いものを食べに行かないか?」

「うん。どこに行く?」

「いつもの喫茶店。」

 四葉は年頃の少女らしい顔を取り戻し、楽しそうに乃木と歩いていった。


「ちなみに僕はフローラだね。暴力的な女の子は嫌いさ。」

「神様。そんな俗世のことに気を取られては。」

「僕を神様なんて言わないでくれる?君も神様で、僕は君たちに従うしかないんだから。」

 神様は溜息をつく。

「僕は君たちのように運命に逆らうような真似はできないし、君たちは運命に絶対逆らえない。僕はなんてひどい役回りを押し付けられたのだろう。」


Please tell me how to get “YOME”

Fine.



不毛な争いについて


 小説大賞に落ちた。ものすごく落ち込んだ。でも、これ、前回のあとがきで書いたよね。物凄く恨んでいたりするけれど、きっと三秒前には忘れてしまうことだろう。

 さて、今回は番外編なのですが、ぶっちゃけ、こんなに長くなる予定もなかったのです。だって、主人公がドラクエするだけの話なんだぜ。ぶっちゃけ、全キャラ出すつもりもなかったのですが、まあ、流れ的にいけそうだったので。でも、まさか一万字いくとは。

 さて、ビアンカかフローラかという話題はかなり不毛だそうである。でも、物凄く悩むのだ。良心の呵責に悩まされた挙句、フローラを選ぶのだった。

 そこについて、無駄に争いを繰り返したりしているのである。特にネット上では声や表情が分からないので、ちょっとした言葉で人格否定だとか叫ぶのである。でも、ぶっちゃけただの好みの問題なのにどうしてそこまで争えるのかと思ったりする。

 そして、右腕がいたい。上に上げられないほど痛い。ぶっちゃけ、左腕しか碌に使えない。キーボードは打てるけど、物凄く痛い。

 そして、結局どうでもいいことで終わるのだった。

 何故か自分にとっては駄作だと思った作品がアクセスが多いのである。なんだかなぁと思いつつも、やはり私の感性はどこかずれているのだと思わずにはいられない。

 腕が無茶苦茶痛い。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ