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某国Ⅱ

「観測機より、シャイアンが巨大生物に襲撃されているとの報告!船体に多数の裂け目を確認したとのことです。」


エドワードがシャイアンに魚雷攻撃を許可してから数分、空母のCICでその声があがり周囲は一斉に騒めいた。艦隊の士官らは打ち合わせをしていたが、その報告を聞き駆け足で状況把握に入る。


「シャイアンより遭難信号を受信」


「観測機より続報、損害は大破の模様。」


「目標は未だシャイアンに取り付き、破壊行動を継続中です。」


通信兵らは総出でモニターに向かい、各所から上がってくる情報を集約、読み上げていた。

その状況下、エドワードは表情一つ変えることなく司令官の席からその光景を眺めていた。その姿に業を煮やした士官が、


「司令官!指示をお願いします!この混乱を見て何も思われないのですか!」


一人詰め寄り叱咤した。CICが一瞬、沈黙に包まれ周囲の視線がエドワードに注がれる。


「第七艦隊とはいえ、この程度か?自分達で考えて行動するくらい出来るだろ。一々俺の指示を待つな、少佐以上の階級者なら今回の作戦プランぐらい目を通してるだろ。プラン通りにやれ。」


静まり返った中、彼はCIC全体に聞こえるように声を張り上げた。数人の士官が俯く。


「了解。プラン通りに作戦を進めます。」


その中、艦隊に所属し、CICの中で一番階級の高いノーマット中佐が短く返事をした。エドワードはその返事に無言で府なずいて見せる。ノーマットはその仕草を確認し、


「戦闘救難隊、直ちに発艦。第二次攻撃隊は発艦後、巨大生物をシャイアンから引き離すよう攻撃を加えろ。第一攻撃隊の着艦準備、急がせろ。」


緊張気味な表情を見せながらも指示を飛ばし、CICは再び忙しく動き出した。


その光景をエドワードは見届け、後ろのスペースにいた空軍兵らに体を向け打ち合わせを始めた。ノーマットはその動きに気付き、一瞬不審に思ったが我に返りモニターに目を向けた。


「観測機より、目標の表皮硬度についての報告があがってきました。通常魚雷及び対艦ミサイルの攻撃では効果は確認出来なかったとのことです。」


直後、下士官が小走りで彼の元に駆け寄り報告してきた。それを聞きノーマットの表情が一気に曇った。モニターに再び目を戻すと第二次攻撃隊は後数分で攻撃圏内に入ることが分かった。決断する時間に猶予はなかった。しかしこのまま第二次攻撃隊に通常攻撃を命令したとしても、効果がないことからシャイアンから離れてくれないことは見えていた。


それはつまり潜水艦に残る兵を救助することは出来ず、戦闘救難隊を発艦させた意味がなくなることを示していた。ノーマットの頭の中は混乱し、気付けば声にならない声で悩んでいた。それを見、下士官が声を掛けようとした時だった。


「中佐。コロンバスを前に出せ。」


その声が上から降ってきた。顔を上げると司令官の席からエドワードが指示していた。


「ですが!コロンバスまで餌食になります!沈めたいんですか!」


ノーマットはすぐに反論した。しかしエドワードは気にすることなく、


「第七艦隊の現状は分かった。もういい。生き物一匹どうすることも出来ないのか。」


見兼ねたと言わんばかりに立ち上がり、愚痴をこぼした。艦隊司令を追放したのはどこのどいつだ。海軍士官らがそう思う中、エドワードは通信兵にコロンバスを前に出す指示を送るよう念押しをした。断ることの出来ない通信兵は恐る恐るコロンバスに命令を送る。


「コロンバスは無傷で、シャイアンの乗員を助ける。その代わり艦隊の戦力を使い、奴をシャイアンから離したら放火を集中させろ。いいな?」


ノーマットの目を見ながらも、エドワードは声を張り上げ全体に言い放った。


「イェッサー」


少しの間を空けた後、ノーマットはその一声を絞らせた。エドワードは返答を聞き、再び席に戻って行く。それを見、


「コロンバスの周囲に駆逐艦を展開。目標がシャイアンから離れた事を確認次第、トマホークによる攻撃を許可する。」


いま自分に出来る最善の指示。ノーマットはそう考え周囲に命令を下した。


「了解。シャイロー及びカーティス・ウィルバーをコロンバスの直掩にまわします。」


「第二次攻撃隊の半分をコロンバスの周囲に展開させます。」


担当の士官らは指示を受け、直ちに具体的な行動に移り始めた。通信兵だけではなく、自ら通信機を手に取り調整を行う士官も見えてきた。


「観測機より緊急。目標はシャイアンを離れ、コロンバスの方向に移動を開始。シャイロー及びカーティス・ウィルバー、戦闘態勢に移行します。」


その中、一人の通信兵が大きく後ろを振り向き報告してきた。餌に食いついた。誰しもがそう思いながらノーマットに視線を送った。


「よし。戦闘救難隊は総力をあげて生存者等の救助にあたれ!」


まずは友軍の救助が最優先だ。その思いからノーマットは反射的に言い放った。担当の隊員が忙しく動き始める。モニターに目を映すと救難機から送られてくる映像が流れていた。そこには見るも無残なシャイアンの姿があり、ノーマットは腹立たしい気持ちにかられた。


「目標!攻撃圏に入りました!」


その渦中、艦隊の火器管制官を担当している、少佐の階級章をつけた士官がモニターを凝視しつつ報告してきた。その内容にCIC内の緊張は一瞬にして高まった。ノーマットは思わずエドワードの顔を見る。彼はそれに気付き小さく頷いて見せた。それを見、

「表皮の一枚ぐらいはがして見せろよ、ファイヤー!」


緊張の高まりからか、ノーマットは怒鳴るような口調で叫んだ。


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