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日本のために3


「『あすか』前部VLSよりミサイル発射を確認!」

「『あすか』より報告。カドミウム弾必要数の算出を完了したため、巨大生物に向け攻撃を開始したとのこと。」


試験艦『あすか』を防衛する護衛艦『ちょうかい』のCICで、通信員らがそう報告をあげてきた。


「ようやくか。」


『ちょうかい』艦長はその報告を聞き、一言呟いた。

隣に座っている砲雷長も、少しばかりか安堵の表情を浮かべる。あと少しだ。その思いからだった。

しかし、『あすか』がミサイル発射を始めたことで、今まで散発的な攻撃を繰り返していた中国海軍の戦闘機の動きが一気に活発になる。『ちょうかい』の持つ、SPY1レーダーはその動きを確実に捉えていた。


「艦を盾にしてでも『あすか』を守るぞ!あと少しだ!」


距離をとって攻撃していた中国海軍の戦闘機郡。それが一斉に艦隊に迫ってきている。その様子をレーダー画面で確認した艦長は周囲の隊員にそう言い放ち、士気を鼓舞した。その中、


「トラックナンバー11右旋回開始。ミサイルを発射した可能性が高い。」


「トラックナンバー11より小型目標分離を確認。数4。この目標対艦ミサイルと思われる。全弾『あすか』に向かう!」


電測員が、レーダー画面を見ながら反射的に報告をあげた。

「対空戦闘!目標β3からβ6!発射弾数4発。SM2攻撃始め!」


砲雷長はその報告を受け、即座に指示を出した。

武器管制員はその指示を身体で受ける。

直後、艦体が小刻みに4回揺れた。

それから数秒、

「敵ミサイル3発撃墜!1発サーバァイブ!」


その報告が砲雷長の元に届いた。1発撃ち漏らした。

一気に表情が険しくなる。敵対艦ミサイルの位置を正面にあるレーダー画面で確認した。本艦の極近距離を通過する。主砲は間に合わない。瞬間的に判断し、


「CIWSエーエーWオート!EA攻撃始め!」


の一声をあげた。

直後、外部を写しているモニターに、射撃を開始したCIWSの映像が流れ始める。他の外部モニターには、『すずつき』と『さみだれ』も、『ちょうかい』の撃ち漏らしたミサイルに対して主砲やCIWSで迎撃している様子が映し出されていた。それから間もなくして、


「敵ミサイル撃破!」


電測員がそう口を開く。砲雷長は安堵から軽く息を吐いた。しかし、


「全対空目標より小型目標分離!高速で近づく…!数20、この目標全て対艦ミサイルと思われる!」


電測員は焦燥感を隠せない表情で砲雷長に報告をあげた。その内容にCICにいた自衛官らは凍り付いた。


一気に仕掛けてきた。


全員がそう思った。砲雷長は現在の各種兵装の残弾をすぐさま確認する。本艦だけの対応では無理だ。その結論に至った。対艦ミサイルが既に発射された状況。僚艦と連携を取るにも時間がなさすぎる。即座に判断出来なかった。その姿を見た『ちょうかい』艦長はすぐに、


「『すずつき』及び『さみだれ』に要請!本艦の撃ち漏らしたミサイル全てに2艦で対応。本艦は残っているSM2全弾でこれに対応する!」


そう指示を出した。それを聞き、隊員らは忙しく動き出した。砲雷長は艦長の対応に敬服しつつ、申し訳なさにかられた。しかし後悔している場合ではない。艦長の指示をより具体的に下に伝えるのが私の仕事だ。そう思い、


「対空戦闘!CIC指示の目標!SM2攻撃始め!全弾発射!」


武器管制員にそう指示を出し、続けるようにして、


「『あすか』防護体制をとる。艦橋へ、機関出力一杯面舵!」


(CICより艦橋、機関出力一杯面舵!)

通信員へそう指示を出した。各所で復唱が繰り返され、操舵から艦が傾き始める。


『ちょうかい』の指示を受け、『すずつき』と『さみだれ』も各艦長の指示に基づき各個迎撃にあたり始めた。


だが、20発の対艦ミサイルは艦隊を包囲する形で放たれていたため、3艦で全方位の脅威に対応する事は厳しかった。

「SM2残弾なし!主砲及びCIWSも残弾わずかです!」


撃ち漏らしたミサイル数がレーダー上で明らかとなる中、その報告が砲雷長の耳に入る。


「全弾撃ち尽くせ!『あすか』に近接後はチャフで対応する!」




ほぼ叫ぶような口調で指示を出した。艦長の顔を見ると、その判断を追認するように頷いている。


(右対空戦闘、CIC指示の目標!砲斉射!主砲撃ちぃ方始め!全弾射撃!)


その指示を受け、砲術長は命令を降ろした。

砲術士が反射的に引き金に指を掛ける。

それから数秒、主砲の射撃が始まった時に起きる振動が小刻みに艦体を揺らした。


レーダー画面を見ると未だ6発は迎撃出来ていなかった。

『すずつき』と『さみだれ』からも、残弾なしの報告が入ってきた。


「このままでは…。間もなく本艦に着弾!」


電測員がレーダー画面を凝視しながら悲鳴に近いような声で報告をしてきた。


「衝撃に備え!」


艦長は艦内マイクに叫ぶ。全員が身構えた。


叩きつけられるような激しい振動-


コンソールに体をぶつけた者。壁に体を打ち付けた者。床に倒れ込んだ者。いくらしがみついて身構えていても、無傷では済まなかった。


(船体に大激動!!)


艦内のスピーカーからその声が聞こえてきた。

砲雷長は右手で頭を抑えながら周りの状況把握に入った。倒れている部下の意識確認を行っていく。

艦長は後頭部から出血していたが、タオルで止血しながら立ち上がった。そして艦内マイクを手に取り、


「総員退艦!総員退艦!」


繰り返し言い、自身もCICにいた部下の安否確認を始めた。何とか防げたか。砲雷長と艦長はそう思った。

唯一映っていた外部カメラの映像。そこには試験艦『あすか』の状況が映し出されていた。見る限り、ミサイルは命中していない。守り切った。後は自分達が無事に帰るだけだ。映像を見ながら2人はそう思いつつ安否確認を続ける。しかし、その直後、試験艦『あすか』に吸い込まれるように迫る光点。砲雷長はその映像に息を呑んだ。それから数秒、試験艦『あすか』の艦体後部にその光点は命中し、艦の後ろ側で大きな炎が上がり始めた。










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