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2話 原住民、魔王軍幹部と戦う。

 「国王、勇者達が職業を決めたようです」


 「さっき言ってたやつか。それでどのようなパーティになった?」


 基本的に監視の水晶玉を見るのは大臣1人で、彼が状況を報告してくれるのを余が玉座に座って聞くスタイルに落ち着いた。だって余には彼らの声が聞こえないから見てもよく分からないし、大臣と顔引っつけて水晶玉を覗くのも嫌だしね。


 「えーと、それが……」


 大臣がバツが悪そうに余から目をそらす。戦士、武闘家、魔法使い、僧侶を250人ずつというのが上手くいかなかったのだろうか。


 「どうした? 早く申せ」


 「では、ガイドくんが聞いた話をそのままお伝えします。「我々は全員、生まれついての戦士だ。貴様はそんな我々に魔法のような軟弱な物に頼れと言うのか? 文句は言わせん、我々は全員戦士を選択する」との事です……。仕方なくガイドくんが衛生兵として僧侶になったみたいなので今のパーティは戦士1000人と僧侶1人です」

  

 「やっべぇな」


 魔法を使っての戦い方が確立されている今、敵の魔法使いにとっては戦士1000人などただの的でしかない。空を飛んでいる敵とかどうするんだあいつら。


 「勇者達は「もしこの方針に文句をつけるなら我々は魔王より先に貴様らを滅ぼすだろう」と言っているようです」


 「こええよ」


 やはり利害の一致がネックになってくるのか……。まぁやられたらやられたでまた新しい勇者は召喚できる。抵抗してもこちらに被害が出るようなら今は彼らの好きにさせるべきだろう。


 「裏切られては元も子もない。ガイド君にはできる限り彼らの希望に答えるよう伝えろ。しかし全員戦士と来たか。鉄の剣を支給してやりたいが多分1000本も無いな……」


 バランス良く分かれてくれたならしっかり全員分の装備を用意できたのだが。


 「それなんですが現在勇者達は武器の調達のために街を抜け、宵闇の森に向かっています……」


 大臣が冷や汗を流しながら余に震える声で告げた。


 「宵闇の森ィ!? あの魔王軍幹部の1人、エビルデュラハンが居を構えている宵闇の森ィ!? 確かに城からは近いが何故にあんな危険な所へ武器を調達しに行くのか……」


 「説明ご苦労様です。なんでも質のいい「ひのきのぼう」が欲しいからと木々が沢山ある森に向かったみたいですね。ガイドくんも行きたくないってウガガラさんを説得してるみたいですけど聞く耳も持ってくれないみたいです」


 ダメだ、頭が着いていかない。宵闇の森は街の冒険者達も攻略しようと何度も突入したダンジョンだが、その全員が顔面蒼白の廃人のような状態になって帰ってくるという呪いの森だ。


 集めた情報によると、森の長、エビルデュラハンに襲われた者は魂を奪われて感情を失うようだ。うん、これはもう勇者達もダメかもしれない。というか普通最初はそこら辺の魔物を狩ってレベルを上げるのがセオリーのはずだ……。


 「あっ、宵闇の森に着いたみたいです。思ったより早いですね」


 「もういい、勇者召喚の儀で疲れたので余は寝る。勇者達が全滅したら起こせ」


 「はっ、おやすみなさいませ」


 大臣は水晶玉から目を離さず、声だけで返事をした。


 ◇◆◇


 目を覚ます。窓から見える外はもうすっかり暗くなっていた。玉座で眠っていたので体を動かすと少し痛い。


 大臣を見ると先程と変わらずただジッと水晶玉を見ていた。という事はまだ勇者達は生きているのだろう。エビルデュラハンと遭遇するまでに何人減っただろうか。


 「大臣、おはよう」


 「おぉ、国王様。おはようございます」


 大臣はいつもより気持ち少し声が高めで返事をした。何かいい事があったのだろうか。


 「大臣、状況は?」


 余は大臣に神妙な面持ちで聞いた。余が寝てから4時間は経った。何人かは心を患い、最悪の場合死人も出ているだろう。ガイドくんが無事だといいのだが……。


 「先ほどエビルデュラハンを倒したところですね」


 「え?」


 エビルデュラハンを倒した? 我が国最強の騎士団、光の騎士団でも歯が立たなかったあのエビルデュラハンを4時間で倒した?


 「まず森に着いた勇者達はひたすら木を素手で切ってひのきのぼうを生産しました。その行為にエビルデュラハンがキレてボス部屋から出てきました」


 「まぁそうだろうな。自分の家を勝手に解体されるようなものだ」


 「それを勇者達は撃破しました」

  

 「どうやって?」


 「1000人で囲んで袋叩きです。グンマーの民の中にはエビルデュラハンを恐れる者は一人もおらず、全員が果敢に立ち向かったようです」

  

 「うわぁ」


 エビルデュラハン、金の鎧を身にまとい、大きな黒馬に跨った首無し騎士だ。それがほぼ全裸の男に囲まれてボコボコにされる状況を思い浮かべる。うん、大体分かった。


 「で、犠牲は。勝てたとはいえ相手は魔王軍幹部、無傷では勝てまい」


 「はい、6人ほど怪我人が出ました」


 「すっくねぇ! エビルデュラハンももうちょっと強いと思ってたのだが」

 

 「あ、エビルデュラハンとの戦いでの怪我人は0人です。その後ドロップした金色の鎧の奪い合いで6人の怪我人が出ました。まぁそれも僧侶のガイド君が治療しましたが」


 驚きのあまり声が出ない……。なんだ? これが異世界の勇者の力なのか? これ割と世界救済いけんじゃね?


 「大臣、余にも水晶玉を見せてくれ。勇者達の顔を見たい」


 「はっ」


 言って大臣が水晶玉から立ち退き、代わりに余が水晶玉を覗き込む。


 水晶玉には勇者達が森の奥でバーベキューをしているのが映し出された。本当に死傷者は出なかったようで皆楽しそうだ。


 「大臣、これは?」


 「祝勝会ですな。馬肉と豚肉を焼いているようです。馬肉はエビルデュラハンが騎乗していた馬から、豚肉は宵闇の森のオークを狩って手に入れたみたいです」


 馬はともかく、人語を話す種もいるオークを食べるなんて初めて聞いた。確かに豚のような顔をしているがまさか食うとは。だが、それを食べる彼らの表情は皆満足気だ。


 「何だか見ていると余も腹が減ってきた。大臣、余達も食事にするか」


 「では通信魔法で厨房に伝えておきます。何が食べたいですか?」


 「……豚肉」


 「かしこまりました」


 大臣の返事を聞きながらも水晶玉を見る。すると驚くべき物を見つけた。エビルデュラハンの黄金の鎧を着ているのはなんと我が国の兵士、ガイドくんだった。ウガガラさんや他のグンマーの民達と仲良く肉を焼いている。


 「大臣、ガイドくんは鎧の争奪戦に勝ったのか?」


 「いえ、勝利したのは族長のウガガラさんです。ですが彼はこの中で一番貧弱な物にこそ鎧を着る資格があると言いました。曰く、鎧は弱きものを守るためのものだから我らには不要。だそうです」


 いいやつだなぁ。強さと優しさを持っているなんて本当に勇者みたいな民族だ。現金な話だがエビルデュラハンを倒した事で彼らにも期待を持てるようになってきた。


 「へい! 焼き豚おまち!」


 玉座の間が開かれ、1人の金髪少女が入ってきた。見間違えるはずもない、余の娘、つまりこの国の姫、ジュリエッタだ。


 「ジュリエッタ、どうしてお前が食事を……、それにその格好は?」


 ジュリエッタが着ていたのはいつものドレスではなく、厨房の者が着ているエプロンだ。


 「厨房のおばちゃんにごはんの作り方教えてもらってたの! そこにだいじんからの連絡がきたからわたしがもっていくことになったの! あのね、ぱぱのはあたしが盛り付けたんだよ!」


 「そうかそうか、偉いぞ。ご苦労だったな」


 言うとジュリエッタは焼豚の皿を余と大臣に渡すと、

  

 「まいどありー」


 厨房へ戻っていった。あの年で料理に興味を示すなんて我が子ながらなんていい子なのだろう。厨房のおばちゃんの給料は上げておこう。


 「魔王さま、勇者達が就寝しました。一応交代で見張りを立てると言ってるので大丈夫かと」

  

 「ふむ、では余達もこれを食べたら寝るか。で、明日の予定は?」


 「このノリで明日も魔王軍の幹部を倒しに行くそうです。近場だと禁忌の塔でしょうか。1000人も入れる広さではないので厳しい戦いになるかと」


 「そんなスタンプラリーみたいなノリで魔王軍幹部を倒すのか……。確か幹部は全部で3人だったよな?」


 「はい、幹部達は我々人間を監視するため国の近くに住処を構えているため丁度いいって話みたいです」


 「もう余は突っ込まん」


 そうして余は細かく切り分けられた焼き豚を口に運ぶ。娘が盛り付けてくれた焼き豚は、いつも食べる料理よりもずっとおいしかった。

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