帰路にて
山の中に帰って行く二つの影を見送って、私たちは家路についた。
楓はずっと不機嫌そうに黙っている。
「ねぇ、どうしたの?」
「………認めないからね」
「え? なにを?」
「お姉ちゃんあの人が好きなんでしょ」
「へ? えぇ?!」
「お姉ちゃんはわたしと離れてても平気だったんでしょ………あの人がいたから!」
「そんな、そんなんじゃないよ……たぶん」(でも、楓が言うならそうなのかも…)
「あ、ほら、顔が赤くなってる!」
「ぅ、うぅ…」
いたたまれなくなって私は走り出した。
「あ、逃げるな!」
楓が追いかけてくる。走っているうちになんだかおかしくなってきて、私は笑い出した。
(これが、私の幸せなのかな)
笑いながら、そう思った。
「あ、そうだ、さっきの」
「つかまえた! さっきの?」
「うん。その、愛があるって…冗談だよね?」
「え、本気に決まってるでしょ。まさかわかってなかったの?」
「でも、あんな意地悪ばっかり…」
「だって悔しかったんだもの。わたしはこんなにお姉ちゃんのこと思ってるのに、お姉ちゃんはなかなか私のこと見てくれないし。だから、お姉ちゃんの周りがわたしだけになればいいと思って」
えへっと小首を傾げてみせる楓は可愛かった。可愛かったが、
「む、無茶苦茶だよぅ」
「お姉ちゃんにはこの気持ち通じてると思ってたのになぁ」
「わかんないよ…」
「みたいだね。だから今度からはもっとわかりやすくするよ」
「う、うん。お願いします」
これからいったいどうなるのか、少し不安だったが今よりはいいだろう。
ちなみに、お母さん達が言ったと言っていたことはやっぱり嘘だった。楓いわく、
「紅葉は大人しくてかわいいね~。お人形さんみたいってさ」
「そ、それは褒めてるのかな?」
「だとおもうよ。ずっと家にいればいいのにってよく言ってる」
「でも、私にはそんなこと言ってくれたこと……」
「言ったらお姉ちゃんまに受けそうだからでしょ」
「そ、そっか」
「ま、わたしはそれでもいいんだけどね」
「……」




