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山に住む人~根暗少女と毒舌男~  作者: ねこ吉
紅葉の冒険
6/9

帰路にて

 山の中に帰って行く二つの影を見送って、私たちは家路についた。

 楓はずっと不機嫌そうに黙っている。

「ねぇ、どうしたの?」

「………認めないからね」

「え? なにを?」

「お姉ちゃんあの人が好きなんでしょ」

「へ? えぇ?!」

「お姉ちゃんはわたしと離れてても平気だったんでしょ………あの人がいたから!」

「そんな、そんなんじゃないよ……たぶん」(でも、楓が言うならそうなのかも…)

「あ、ほら、顔が赤くなってる!」

「ぅ、うぅ…」

 いたたまれなくなって私は走り出した。

「あ、逃げるな!」

 楓が追いかけてくる。走っているうちになんだかおかしくなってきて、私は笑い出した。

(これが、私の幸せなのかな) 

笑いながら、そう思った。   

「あ、そうだ、さっきの」

「つかまえた! さっきの?」

「うん。その、愛があるって…冗談だよね?」

「え、本気に決まってるでしょ。まさかわかってなかったの?」

「でも、あんな意地悪ばっかり…」

「だって悔しかったんだもの。わたしはこんなにお姉ちゃんのこと思ってるのに、お姉ちゃんはなかなか私のこと見てくれないし。だから、お姉ちゃんの周りがわたしだけになればいいと思って」

えへっと小首を傾げてみせる楓は可愛かった。可愛かったが、

「む、無茶苦茶だよぅ」

「お姉ちゃんにはこの気持ち通じてると思ってたのになぁ」

「わかんないよ…」

「みたいだね。だから今度からはもっとわかりやすくするよ」

「う、うん。お願いします」

 これからいったいどうなるのか、少し不安だったが今よりはいいだろう。

 ちなみに、お母さん達が言ったと言っていたことはやっぱり嘘だった。楓いわく、

「紅葉は大人しくてかわいいね~。お人形さんみたいってさ」

「そ、それは褒めてるのかな?」

「だとおもうよ。ずっと家にいればいいのにってよく言ってる」

「でも、私にはそんなこと言ってくれたこと……」

「言ったらお姉ちゃんまに受けそうだからでしょ」

「そ、そっか」

「ま、わたしはそれでもいいんだけどね」

「……」


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