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第2話 経緯







 草原に血飛沫が舞う。

 ロングソード越しに、骨と肉を切断する感触が伝わってくる。

 冒険者である俺、アルフレッドは今日も魔物の討伐に精を出していた。


「えーと、一角ウルフの角20本で……よし、これで終わりだな」


 討伐証明部位を数え終わると、倒した魔物の素材を剥ぎ取っていく。

 血を抜きながら傷口を見ると、鮮やかな切断面が目に入る。

 傷口は切った部分の損傷が少なく、肉が潰れていない。

 自分の剣技が鈍っていないことを確認した俺は一人満足して頷く。

 

 と、そんな時聞こえてきた悲鳴。

 俺は悲鳴のした方向へと駆けだした。

 そうして向かった先にはゴブリンに囲まれている獣人の女の子の姿が。

 ゴブリンは異種族の雌を孕ませる習性がある。

 そんな魔物に囲まれているのだから、相当な恐怖だろう。


 俺はすぐにゴブリンたちの後ろから切りかかり、腰を抜かしている少女を助ける。

 ゴブリンたちは突然切りかかってきた俺に混乱し為す術もなく倒されていく。

 武器に気を付ければゴブリンの筋力は弱いのでそこまでの脅威ではない。

 しばらくするとそこにいるのは俺と獣人の女の子だけになった。

 年下だな……見たところたぶん16か17くらい。


「ふう……あんたも災難だったな、ここら辺はゴブリンが多く出るからあんまり奥に行かない方がいいぞ」


 出来るだけ安心させるように優しい声色で声をかける。

 怪我は……見た限りでは何ともなさそうだが。 


「…………」


 獣人の少女はぽーっと熱っぽい瞳でこちらを見てくる。

 こっちの声には反応していない。


「……大丈夫か? もしかしてどこか怪我を」


「え、あ……いやっ……は、っはい! だ、大丈夫です!」


 ハッとしたように少女は土汚れを払って、わたわたと慌てた様に、素早く立ち上がる。


「お、おう? ならいいが」


 すると獣人の少女は凄い勢いで頭を下げてきた。


「あ、あの……! 助けていただきありがとうございますっ!」


「気にすんな、困った時はお互い様だからな」


 俺がそう言った途端、少女はどこか困惑した様子を見せ始めた。


「で、でも……え、っと」


「?」


 少女は狼の耳を指差して、恐る恐る言ってきた。


「わ、私、獣人ですよ……?」


「うん?」


 少女が何を言っているのかよく分からなかった。

 獣人だというのは見ればわかる。

 確かに珍しいが……少女はまるでそれが悪いことかのように怯えているようだった。


「え……へ、平気なんですか?」


「……何がだ?」


「あ、亜人なんですよ……?」


 そこでようやく少女が何を言いたいのかを理解した。

 この辺りでは一部ではあるが、獣人を亜人と呼んで蔑む人族至上主義のやつらがいる。

 亜人……ようするに、人に似てるけど人じゃないって言ってるみたいなもんだな。

 差別用語だ。

 街で何か嫌なことでもあったのかもしれない。

 それで俺も獣人だと知って態度を変えるのかもと思っているのか。


「耳と尻尾がついてるだけだろ? 耳に至っては俺にだってあるし」


 獣人も人族も似たようなもんだ。

 そんな意味を込めて言ってやると、少女は噴き出した。


「ぷっ、あはははっ」


 何かがツボに入ったのか、少女はようやく固かった表情を綻ばせた。

 ……笑うと可愛いな……っていうか、今気づいたけど凄い美少女だな。


「ああ、それとこれ」


 俺は薬草の塗り薬を少女に渡した。


「これは……?」


「塗り薬だよ、足痛めてるんだろ?」


 最初は怪我をしてないと思ったけど、立ち上がった時に一瞬だけ動きがおかしかった。 

 たぶん足を捻るか何かしているのだろう。


「あ、ありがとうございますっ!」


「おう」


 気にするなと笑いかける。


「あの! 私、レオーネって言います!」


 すると少女が名乗った。


「俺はアルフレッドだ、よろしくな」


 俺もそれに応える。


「弟子にしてくださいっ! 師匠って呼んでもいいですか!?」 


「おう……ん?」


 流れがおかしくなったのはそこからである。

 それからはもうついてくるわついてくるわ。

 少しでも疲れた様子を見せれば水を差しだしてくるし、荷物をお持ちします! とか言って俺の荷物持とうとするし。

 最初は可愛い女の子ってことでどぎまぎしていたけど、それも少しずつ慣れてくるとまあ……うん、ちょっとだけうっとおしい。

 そこからはなし崩し的に弟子にして、師匠呼びが定着して……気付けば強くなりたいという彼女の実力を見てやることになっていて……

 

 そんな経緯で冒険者アルフレッドは獣人の少女レオーネに懐かれたのだった。







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