夢の話
あなたは3時間以内に6RTされたら、俳優と一般人の設定で前世の記憶を持ったふたりが再会する話のhsweltの、漫画または小説を書きます。
shindanmaker.com/293935
で、されてなくても書き始めました。
夢の話
「えっ嘘だろ」
度付きの薄い色のサングラス越しに、交差点を見下ろす。カフェのチェーン店内は適度にざわついていて、こちらの呟きなんかほとんど周りに聞こえない。
「嘘だろ〜」
頭を抱える。落ち着け、分かるわけない、向こうからこっちは見えない。そもそも、覚えているわけがないのだ。他人の空似、だろうし。
(そうそう。他人。だって、該当するやつは、夢の中の住人だし)
子どもの頃から見ていた夢。広々とした、明るく光を取り込む、白い石造りの城。子どもの笑い声。優しい両親。夢はカラフルで、音も匂いもあって、あまりにはっきりしていた。自分の成長と共に登場人物の年齢もあがっていった。最近、見ないなと思っていたんだが。
(しっかし、そっくりだなあ)
交差点を渡る姿、その、一瞬だけかちあった気がした、綺麗な琥珀色の目。
「見つけた!」
突然大声が聞こえて、驚いてコーヒーをこぼした。
「あっすみません」
大声のまま、後ろから、その人物は、隣の席に割り込んできた。コーヒーはこぼれたまま。
「あの、あの、あなたのこと、俺、知ってます」
「あっ? あ、えーと」
隣の席に座ったのは、さっき、交差点を渡っていた、人物だ。
いや待て驚くな、これは運命なんかじゃない。こういうことは、たまにある。あんまり有名ではないけれど、端役の、俳優もしているので。ファン、とまでは名乗らなくとも、知ってます、応援してます、と声を掛けられたことなら、ある。
だから落ち着いて、
「そうなんだ?」
「ミーシェでしょ?」
落ち着けなかった。こぼれたコーヒーをよけてテーブルに突っ伏す。店員さんがコーヒーを拭いてくれる。謝って、それから、
「何で……?」
「何で、って。俺とミーシェは、運命だから!」
「いやだから何でだよ、お前はほとんど外見変わってないのに、こっちは別人でしょう? 何でそんな名前で呼ぶの、しかも夢でしょ」
「そりゃ、まさか人間になってるとは思わなかった。探してたんだよ俺。ミーシェ」
とびきり、愛おしそうに、相手は笑って。
「立派な毛並み、大きな耳、鋭い牙、もふもふのお腹にしっぽ!」
「やめろそんな目で見るな、そんなに獣っぽいか?」
「獣っぽくはない、かわいい。きれいな、しなやかなネコ科の大きな獣だった頃と、雰囲気はそっくりだよ」
「ふん……」
「今、何やってんの? 狩り? どこに雇われてる?」
「いや、ここ現代ですから」
あの、夢の中のような、ふんわりとした光はここにはない。
「端役の俳優」
「へー! どれ? 何か配信とかで今すぐ見られるやつある?」
「見なくていいでしょ、見たけりゃ今の姿を見てよ」
「うん、うんうん。俺もさ、何言ってんの? って言われるかもしれないとは思ったんだけど、こんなにスムーズに再会するとは思わなくて、どうしたらいいか分かんないの」
「じゃあ」
とりあえず、連絡先を交換する。それから、自己紹介。子どもの頃のこと、夢を……同じ夢を見た、それが多分、夢じゃないんじゃないかと、少し思っていて、でも気のせいだろうと、そっと蓋をしていたことを、店を変えながら少しずつ話した。
その日の晩は、夢を見た。
広い草原を駆ける夢。
今はもう存在しないしっぽが、ゆらりと伸びる。
風の匂い。
あの世界がどうなったのか、自分は知らない。けれど、大事だった人と、再会したから、これはそう……同窓会、みたいなものだ。
また、会えるかな。
夢の中で、一番好きな木の下で昼寝した。




