歌う小鳥/土地の見る夢
歌う小鳥
あたし、小鳥。好きな声で鳴くの。明るい時は明るい歌。雨が降る日は雨の歌を。
あたしが生まれた時に、多分どこかの神さまが決めたの。あたしが歌うようにって。
その神さまは今あたしの胸の中で鳴いてる。
あたしの羽と嘴にかけて、神さまがさみしくないように、面白おかしく生きるの。
だからあなたも楽しく生きて。あたしのことは忘れていいから。酒もタバコも夜遊びも、してもしなくっても構わない。小鳥が、鳴いてたことも忘れていい。
でもこの空を明けさせたのは、あたしの歌。あたしたちの願い。そぼ降る雨も、晴れた日も、全部あたしたち小鳥の願いのはて。
あなたはあなたの誇りをかけて、あなたの歌を口ずさむ。
土地の見る夢
仕舞でも、多少窮屈だった。舞台上には大道具もなく、客電は落とされ、スポットだけがこうこうとついている。
上着が邪魔で、袖を裏返す勢いで脱ぎ捨てる。足拍子は崩さない。
舞囃子はないが、舞ううちに客席の向こうから笛の音が聞こえてきた。扇もないが、きちんと「届いた」らしい。
先日まで血なまぐさい活劇をかけていた舞台は、当地の記憶を呼び覚まし、夜な夜なナニカが出るようになった。明日のライブで歌えば祓えるとはいえ、あまり現代的な歌で左右するのも哀れな気がした。古い所作に拍子を合わせた異界の者が、場を塗りかえる。すい、と一段空気が軽くなる。
最後に謡をひとつ。もう、この地は悪夢を見ないだろう。
第五十三回のお題「歌」#Twitter300字ss @Tw300ss




