黒猫の旅
黒猫の旅
月と星を取ってきた魔女が、それらを黒猫の体にくっつけました。黒猫は瞬きして、ふわりと宙に浮かびます。
「これがあれば、近づけるだろう。でも、朝には消えてしまうからね」
黒猫は礼を言って、しっぽをふりふり、夜空を駆けます。ある日いなくなった、大好きなおねえちゃんを探しに。
家のおかあさんが、おねえちゃんは星空の中にいると言っていましたから。どの星かしら。
にゃあにゃあ、たずねて歩いても、星々は知らんぷり。
黒猫を浮かせてくれる月と星が、自分たちも知らないの、ごめんね、と謝ります。こうして手助けしてくれるだけでも嬉しいの、黒猫は月と星にお礼を言います。
おねえちゃんはどこ? どこにもいない!
ちかり、星の間を、宇宙ステーションが駆けていきます。黒猫が吸い寄せられていくと、宇宙ステーションの小さな窓から、おねえちゃんが手を振っていました。
おねえちゃんの、口が動いています。
あぶないから、はやく、おうちにかえって! これが夢じゃなかったら!
ひゅんひゅんと、小さな星々が、黒猫のすぐ近くを飛んでいきます。
地面がはるかに遠く、塗りつぶされた暗い空の上、黒猫はぼんやりと浮かんでいました。
ちか、ちか、目にまぶしい何かが飛び込みます。
あぁ、と月と星がため息をつきました。
「朝が来たよ。もう、帰る時間!」
ふいに黒猫は空に投げ出されました。月と星が、またね、と、まばたきながら、もっと高いところへあがっていきました。黒猫を離れて。
流れ星のように、黒猫は空をおりていきました。
やみくもに手足を振ってみます。何かに爪が引っかからないものでしょうか。
「だから、言ったのに!」
突然、人の声がしました。黒猫は、いつのまにか閉じていた目を、そっと開きました。
今いるのは、魔女のほうきの先。
「君は気のいい黒猫だから、料金はまけてあげる。家まで送ろう」
そうして黒猫は家に帰り、毛づくろいしながら、おねえちゃんの帰宅を待つことにしました。
#第11回_月と星と夜空のTwitterシェア企画展
 




