愛する竜と非番日和/真実の果実
愛する竜と非番日和
竜騎士の乗る中型竜が数頭、草原で草を食む。
竜使いはあくび混じりに番をしていた。うたた寝から起きると、竜の口の端から、人の手足がはみ出している。
「ぺっ、して!」
竜は嫌々と首を振る。
「だめ! 出しなさい! 貴方草食獣でしょ」
嫌々。
「それ、竜騎士でしょ!」
竜はそっぽを向く。非番だから言うこと聞かなくていいんだもの。と言わんばかり。
どうにか竜の口から竜騎士を引きずり出す。竜騎士は怒っておらず、竜にでれでれだった(唾液でどろどろだが)。可愛い自分の竜の様子を見に来て、食われたらしい。
「猫と同じで、構いすぎは嫌われますよ」
竜使いは呆れながら、遅すぎる忠告を一応述べた。
※
真実の果実
蔓棚にぶどうが実る。娘が、一房手に取った。
「ほしい?」
問われ、草むらから這い出した。
神々が多くの果実を育てたこの園は、今は捨てられ、管理者が残るのみ。
種子の一つも、持ち帰れたら、地上に植物が戻るだろう。
「ほしい」
言えば、娘は楽しげに、唇を弓なりに曲げる。
「人間が来るのは、久しぶり」
「ぶどうを食べたい」
「急かさなくても。この星を出た人間の、もとはお前達だから。お前達のものよ」
「何?」
「知恵を駆使して訪う者にだけ、真実の果実を。と、彼らは私に遺したの」
娘の背中には、剥き出しの配線。機械仕掛けの神の使徒。
「真実をどうぞ」
作られた笑いで、ぶどうがもたらされる。
第四十七回のお題「食べる」#Twitter300字ss @Tw300ss




