表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/233

肉の話

 サバンナのライオンだって、もっと分をわきまえている。

「ねえ、お肉食べたい」

 可愛らしい顔で、彼女は強欲に言い募る。

 こちらもとっさに言い返す。

「さっきから食べてるじゃん」

 こちらの財布は、胃袋とおんなじ、空っぽに近い。

「だって! 合格のお祝いしてくれるって言った」

「言ったよ。言ったけど、そんなに食うなんて聞いてない」

 自分も食べたい。さっきから網の上に肉を置く係になっている。食べるのはもっぱら彼女。

「キャベツあげるね」

 うさぎみたいに可愛く首を傾げているが、それよりその、つかまえている肉をこちらの口に入れてほしい。最初の味見しかさせてもらってない。

「ねえその肉……」

「飲み物追加しよ!」

 全然聞いてくれない。

 飲み物と言ったのに肉を注文された。高いやつ。

「じゃ、私が飲んでる間、食べてていいよ」

 やっと、肉の気分が一段落したらしい。こちらがせっせと焼いて頬張るのを、にこにこ機嫌よく見つめている。

「そんなに見られてると、食べづらいんだけど」

「やだほんと可愛い。残ったら私が食べてあげるね」

 肉に、焦げたキャベツの切れ端がついている。口に放り込むも、甘い毒みたいに、じんわりと、ほの苦い。

「じゃ、野菜食べなよ」

 言い返すと、やだ、今日肉を食べさせてくれるって言ったよね、と言い返された。

 空気が煙たくて目にしみる。

 あの唇がこの後何をするのかを知っている。

 見た目はうさぎみたいなのに、彼女はとっても、野蛮なのだ。

 こちらができることは、ときどき文句を言いつつ、甘やかしてやることだけ。たぶん。

『強欲』

『サバンナ』

『毒』

Lets 創作

#三題話

https://shindanmaker.com/498918

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ