森のいえ
#ヘキライ
第48回お題、足音
森のいえ
窓を開けると、一面の落ち葉。森の奥のほうから、小鳥のかすかなさえずりが聞こえる。
気のせいだろうか。気配を感じたのだけれど。
白く息を吐き出して、掃除してから窓を閉める。
ストーブにヤカンをかけて、手をあたためた。
こんこん、と窓ガラスが鳴る。
慌てて窓を開けると、人が立っていた。帽子を持ち上げて、やあ久しぶり、と言う。
毎年、この時期になるとやってくる知人だ。
いつも通りに、聞いてみる。
「今回はたくさん、集められた?」
「集めたよ」
ほら、と大きなカバンを開いて見せてくれた。カバンのふちまでいっぱいに、ドングリ、赤や黄色のとりどりの葉っぱが入っている。
「秋をたくさん蓄えたら、また天へ帰るの?」
「そうだよ。女神様は下界の季節を楽しみにしてる。はやく持ち帰って、笑ってもらわないと。それで許可が出たら、今度は冬の当番が来るよ」
今年は新種の白うさぎを連れて来るらしい、と、秋はひみつをもらした。
家には入らず、秋は行ってしまう。
ざく、ざく、葉っぱを踏みしめる足音が去ると、次は、白い雪を連れて冬が来る。




