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エイプリルフールの幽霊
「エイプリルフールって知ってる?」
急ぎ足で進んでいたら、後ろから声をかけられた。来た、と顔をしかめて、足は止めない。
「エイプリルフールってさ、嘘をついてもいい日なんだけど」
べらべらと若い声が言い募る。振り向いたって、たぶん誰もいない。これはそういうものだから。
「何と! その効果は午前中だけなんだ。おれは知らなくて、午後に嘘をついて、赤っ恥をかいたわけさ!」
一言一句、去年や一昨年とも変わらない。
桜並木に差し掛かると、声は浮かれた口調で続けた。
「みんな気をつけろよ!」
かつてエイプリルフールで恥をかき、この道を走りまくった若者の執念が焼きついて生霊みたいになって数年。彼は毎年、道行く人にエイプリルフールの忠告をする。ちなみに午後からは、同じ失敗をした者を慰めてくれる。
今年も、やかましくも親切な幽霊だった。
4/1はエイプリルフール!




