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閃くは我が杖の
一瞬の閃きに飛び乗った。身を翻した途端、さっきまで立っていた場所に一撃が落ちている。
こうした事態は初めてだった。魔法使いと言っても、日がな一日、写本を読んだり研究をまとめるだけ。実践など、神代も遠くなった今、やりようもない。
けれどさっき写本からぬるりと出た魔獣は、口から雷撃を吐いた。震える手で、手近な杖を掴む。魔法を行使する道具。大きすぎるから普段は打撃用にして、森で獣に追われたときに使っていた。
「クソ!」
口汚く叫んでいつも通り殴りつける。魔法使いが何だ。
「やめろ無粋だぞ!」
逆に魔獣が困惑し、魔法を教えてくれることになった。決して武力で負けたからではないと言い訳しながら。
#Monthly300 @mon300nov
毎月300字小説企画第32回お題・一瞬
 




