猫はそこにいる/猫がいた
猫はそこにいる
3の形に丸まって、扉の前から動かない。
猫なので。猫なので!
夜中にトイレに行きたがる人間が、無理矢理退かそうとするけれど、全身を石のように重たくして、床に張り付いて動かない。
扉の向こうは百鬼夜行。最近あまり見ないタイプの、唐傘とかろくろ首とか、古い怪異が歩いている。廊下が異界化したとか通り道とかではない、純粋に迷子なのだ。
だから猫又である先輩猫が、追い払っている。にゃうにゃう、わーお。
飼い主は人間なので耳がよくない。
「何言ってるの?」
ついに退かされて猫は怒るが、間一髪、廊下は静かで先輩猫しかいない。
人間は目もよくないので、すぐ電気をつける。明るくなり闇はもうない。
※
猫がいた
道端で三匹の猫に絡まれた。たまたま景品でもらった猫用のおやつがあるので、それで勘弁してもらおうとしたが、余計に揉める。おやつは二つしかないから。
一人占めするはずのおやつを、分け合うのが気に入らないらしい。喧嘩して、一匹あぶれて、にゃあにゃあと鳴いている。
一旦離れて、おやつを買い足す。戻ってくると、猫達は1、2、3の字になって眠っていた。さて、どの子がおやつを諦めた猫だろう。
日陰からもう一匹出てくる。さらにもう一匹。4の字になって寝そべる。
おやつを全員に差し出して、まだねだられるから逃げ出した。
帰宅したら、浮気を疑う飼い猫の機嫌を取る。おやつはすっかりなくなった。
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毎月300字小説企画第31回お題・3
 




