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蝶と魔法
生まれ変わったら蝶だった。元が何だったか覚えていない。芋虫の記憶もないので、本当は蝶を乗っ取った悪霊なのかも。
薔薇の咲く庭はいい香りで満ちていて、憂い顔の少女が一人、夕暮れの空を眺めている。泣かないで。蝶の羽で撫でるしかできないけど。
「憎たらしい。余裕な顔して」
少女がこちらを睨みつける。乱暴に掴まれかけて、慌てて飛び立った。
何、どういうこと?
「貴方が、魔女の才能があるから跡を継げと言ったの。練習中に貴方を蝶に変えて、逃げようと思ったのに」
外の世界は魔女狩りの最中。ここに隠れているしかない。
晩御飯のためと言って少女が魔法で元に戻してくれる。料理の腕のおかげで命拾いした。
#Monthly300 @mon300nov
毎月300字小説企画第30回お題・蝶




