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伸びる伸びる
朝顔の種をもらった。鉢植えにして育てたら、伸びる伸びる、どんどん伸びる。
家を覆い隠し、電線を伝い、空高くへ。
航空機の進路を邪魔し、大気圏でも燃えずに伸びる。
月が回ってくると、蔓の先に蕾がつく。
開いた花を見て、ウサギが微笑む。
月に放たれたウサギたちは、昔地上を追われた天女のように、ふわふわと飛び跳ねる。
ウサギたちは朝顔の種を採って、月に撒く。掛け合わせて新しい花を生み出すと、蔓は伸びて、伸びて、地上へと降りていく。
そうして空を伝い、電線を伝い、家を通って、あの植木鉢の上に降り立つ。
開いた花はフリル付きで夢見がちな色。
種を採って保管して、また次の花を咲かせる。
#Monthly300 @mon300nov
毎月300字小説企画第27回お題・伸びる




