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魔女の婚姻

 魔界の婚姻方法なんて知らない。だから、さめざめと泣く、伴侶となるべき者の言うままに、命懸けの旅をした。

 底なし沼の底に落ちた大切な指輪とか、複数の頭を持つ狼の腹の毛でできた上着とかを入手するたび、伴侶はちょっと微妙な顔をしたものだ。

 では、次の品物を手に入れてきてください、と喉から絞り出して。

「婚姻に必要というのは嘘か」

「そうだよ! だから俺を解放して」

 不死鳥の燃える尾で作った暖炉が要ると言われて岬にやってきたが、捕まえた不死鳥が命乞いをする。

 凍てついた伴侶の目を思い返す。そうか、この婚姻、疎まれていたのか。

 いや、胸をつらぬくのはいつも、自身の命を懸ける喜びではなかったか。

「構わん」

「ええーっ」

 ぶちりと尾をむしって、不死鳥を放す。

「これはこれでありだ」

「嘘でしょ。あの魔女三十七股してるよ」

「だから身を落ち着けよと、他の連中から私があてがわれた、のは知っている」

「それでありなんだ……」

 不死鳥が呆然と呟いた。そして放されたのに、逃げなかった。

 尾がなくて飛びにくいと文句を言いつつ、他の旅にもついてくる。

 いつしか相棒となり、けれど、魔女に会うときだけはついてこない。

「尾羽以外もむしられたら困るからさ」

 何たって珍しい生き物なんだからね、と不死鳥は胸を張る。

 そうだな、例えばお前の生き血がほしいと魔女が言うなら、私はそれを実行する。何度泣いても、這いつくばっても、結局、きっと。

 だからそこへは踏み込まない。

 不死鳥には魔女に見つからないよう何重にも魔法をかけてある。

 旅の途中、さまざまなひとびとに祈られた。

 たまたま救いとなっただけのこと。例えば毒竜の牙が必要で、やむなく倒したら、その地域に動植物が戻ってきたとか。それでも、恩人だからと、祈られた。幸いを。不死鳥もたくさん祈られて、一つ一つは小さくても、防御の魔法はより強固になる。

 だからこの婚姻は、その手前でずっと続くのだ。

 魔女に踏み込みすぎれば命を失う。自分や、旅の相棒の。

 魔女の気まぐれに感謝して、旅はそのまま続いていく。

せらさんへのお題は、

【魔界の婚姻】、【凍てついた】、【つらぬく】です!

予備:【岬】

#shindanmaker #ファンタジックお題

https://shindanmaker.com/1194949

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