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世迷い迷子と城を歩く
意気揚々と相手は庭を突っ切っていく。
茂みから見送ると、素早く反対側へ駆けた。
「見ーつけたー」
真後ろから聞こえた声に、思わずうめきが漏れる。もう追いつかれたのか。
「まだ続けるの?」
城の騎士の格好をした相手は、不思議そうに見下ろしてきた。
「絶対に諦めない」
嫌悪を剥き出しにして言い返すと、相手は心底嬉しそうに笑うのだ。
「いいよ。俺も諦めない」
迷い込んだ森の中、城を守る衛兵に声をかけたが最後、城の主人ができて嬉しいと世迷い言を言われ、外へ出られない。
「どうしても出るの?」
寂しそうだが絆されない。怪しげな幻獣達の影なんか見てない。歩くことだけが、今できる全てだった。
#Monthly300 @mon300nov
毎月300字小説企画第22回お題・歩く




