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再会
まさかこんなところで出会うなんて。日中の街角で、思わず物陰に隠れてしまう。
ふかふかの毛並みで、ずいぶんとふくよかだ。四つ足は恭しく地面を踏みしめ、幼い主人を先導して意気揚々。ネコ科の大型幻獣の姿を、目に焼きつける。
「お客さん?」
背後から呼びかけられ、さっき注文したテイクアウトの飲み物を受け取り、また隠れる。
怪しんだ店員が再び声をかけ、獣が振り返り、尻尾を立てた。
主人を置き、大喜びで駆けてくる。覚えていてくれたのは嬉しいが。
この獣は、幼い頃に怪我をして野生に戻れなくなり、保護施設で育った。育てた人など忘れてもよかったのに。
皆で自己紹介し、辺りは笑みに彩られた。
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毎月300字小説企画第21回お題・まさか




