208/232
憧れの
憧れの制服に袖を通す。
「行ってきます」
部屋を出て、箒に飛び乗る。
入学前に学校から支給された箒は気難し屋だったが、春休みの間に打ち解けた。本を読み聞かせたり、一緒に寝たりしたおかげかもしれない。
楽しい気分だった。同級生が教えてくれるまでは。
「箒の支給なんてないよ」
教科書と一緒に発注して、初日に学校に届くらしい。アレは何。
「ごめん、言い出せなくて」
箒の注文を忘れているよと、入学前の説明会で先輩は教えてくれるはずだった。悪戯心で、箒に化けて説明したせいで勘違いが起き、同居生活をしただけで。
親切に学校のことを教えてくれる姿は変わらない。
複雑な気持ちで先輩を見送った。
#Monthly300 @mon300nov
毎月300字小説企画第16回お題・憧れ
 




