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酔うて見るのは
罠であることは分かっていた。
(悲しいのう)
龍は地面に寝そべった。愛しい娘は、微笑んで酒を注ぐ。
人間のために、あれこれと世話を焼いてきた。日照りが続けば雨を降らせ、雨が多ければ風で雲を吹き払った。多くの供物は望まず、ただ彼らの営みを見ているのが好きだった。
それは悪龍ですよと、街から来た若者が言ったのだ。世界龍会議をサボっている間に、龍の仕事を放り出したことが問題視されていた。若い龍が人に化けてやってきて、村から追い出そうと試みた。
人間との間に生まれた子孫が酒宴を開くなら、罠でも断れない。
酔い潰れた龍は大型コンテナに詰められて、遠い故郷に送られた。村とはたまに文通している。
#Monthly300 @mon300nov
毎月300字小説企画第15回お題・酔う




