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装われたケーキ
平静を装う。抜き足差し足、室内へ。
台所にはいい匂いのするオーブン。久々のケーキが色良く焼けている。
作り主たる姉は、居間で寝ている。たまに、仕事や振られた腹いせ等で、素朴なクッキーやケーキを作るのだ。
「何してんの?」
目を離した隙に姉が起きた。
「姉ちゃん!」
携帯端末も使う現代の魔女は、弟として育った子猫を、人型の使い魔に変えた。便利だかららしい。尻尾がなくてまだ動き慣れない。
「それは依頼品だよ」
こっちは依頼人から受け取る側の人に頼まれた。
惚れ薬を仕込まなくても好きだから大丈夫、ケーキは処分して、と。
彼らの思いを知っていて、気が済むならと姉は微笑み、ケーキを贈る。
#Monthly300 @mon300nov
毎月300字小説企画第12回お題・装う
 




