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魔法を信じるその先に
簡単に奪われた。あんなに大事にしていたのに。
「そんなことで泣くのね」
「当たり前でしょ」
オルゴールの小箱は、親戚のお姉さんがくれた古いもの。中に小さな鍵が入っていて、対応する錠はない。
それでも、その鍵はまるで魔法の欠片のように思えて、大事にしまっておいたのに。
魔法少女をするには、何らかの希望が要る。そこに魔法があると信じられるだけの何かが。この鍵から夢を見て、変身して平和のために駆け回っていたのに。
鍵を取り上げたのは、友人だったはずの少女。魔法少女の敵対組織の手の者だったなんて。
「貴方だから見せたのに」
「その甘さがかわいいわ」
友人は全てを奪うような微笑みを浮かべた。
#Monthly300 @mon300nov
毎月300字小説企画第11回お題・奪う




