表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
202/232

老いぬ小鳥の行く先は/思いをつないで

老いぬ小鳥の行く先は


 生まれた子が大きくなり、跡を継ぐと言われて、頷くことなどできなかった。

 つなぐわけにはいかない。ここで断ち切らなくては。

 そうなの? 不思議そうに、肩の上で小鳥が首を傾げる。人の恨みつらみから生まれた小鳥は、優しい歌を聴かせていれば悪いことはしない。けれどこちらが踏み外せば、すぐに闇に染まる。

 小鳥は祖父や母の側にずっといた。踏み外して小鳥に飲まれて消えた叔父もいた。

 歌い続ける大変さを、子には与えたくない。

 老年に、小鳥を連れて旅立ち、荒野に倒れる。これでいい。これで一緒に行こう。小鳥は羽ばたいて、優しい風を送る。


 宿主を失って解き放たれた小鳥は、どこへともなく消えていった。



思いをつないで


 学校からの帰り道、図書館の角で遊んでくれる猫がいた。近くの飼い猫で、ゆっくり寝たいだけだろうが、毛並みを撫でて、眠る姿を見るのが、心落ち着く時間だった。

 ある日、あの猫を撫でる先客がいた。優等生でいつも冷ややかな彼女は、いつもと違って穏やかな顔つき。すぐに気づいて強張ったが、猫がこちらにすり寄ると、徐々に打ち解けた。

 老猫は、ある夏の終わりに地上を去った。花を供えたが、他の人達も同じことをしていて、誰にでも優しいあの子らしいと二人で笑った。

「あの子はきっと、いい場所へ行ったんだ。そうに決まってる」

 現実主義者のくせに、彼女はあの子と自分達のために言った。

 つなぐ手の熱さを忘れない。

#Monthly300 @mon300nov

毎月300字小説企画第10回お題・つなぐ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ