老いぬ小鳥の行く先は/思いをつないで
老いぬ小鳥の行く先は
生まれた子が大きくなり、跡を継ぐと言われて、頷くことなどできなかった。
つなぐわけにはいかない。ここで断ち切らなくては。
そうなの? 不思議そうに、肩の上で小鳥が首を傾げる。人の恨みつらみから生まれた小鳥は、優しい歌を聴かせていれば悪いことはしない。けれどこちらが踏み外せば、すぐに闇に染まる。
小鳥は祖父や母の側にずっといた。踏み外して小鳥に飲まれて消えた叔父もいた。
歌い続ける大変さを、子には与えたくない。
老年に、小鳥を連れて旅立ち、荒野に倒れる。これでいい。これで一緒に行こう。小鳥は羽ばたいて、優しい風を送る。
宿主を失って解き放たれた小鳥は、どこへともなく消えていった。
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思いをつないで
学校からの帰り道、図書館の角で遊んでくれる猫がいた。近くの飼い猫で、ゆっくり寝たいだけだろうが、毛並みを撫でて、眠る姿を見るのが、心落ち着く時間だった。
ある日、あの猫を撫でる先客がいた。優等生でいつも冷ややかな彼女は、いつもと違って穏やかな顔つき。すぐに気づいて強張ったが、猫がこちらにすり寄ると、徐々に打ち解けた。
老猫は、ある夏の終わりに地上を去った。花を供えたが、他の人達も同じことをしていて、誰にでも優しいあの子らしいと二人で笑った。
「あの子はきっと、いい場所へ行ったんだ。そうに決まってる」
現実主義者のくせに、彼女はあの子と自分達のために言った。
つなぐ手の熱さを忘れない。
#Monthly300 @mon300nov
毎月300字小説企画第10回お題・つなぐ




