表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
200/232

豆の季節/植木鉢の花

豆の季節


 豆を植える。大きく育てて、雲を割る頃、装備を整えて登り、上空の彼女に会いに行く。

 雲を踏み、数軒立ち並ぶ通りに向かう。呼び鈴を鳴らせば、

「あら、何で来たの?」

 素っ気なく言われた。いい瓜ができたからと渡してすぐ帰る。

「帰り、寒いでしょ」

 と、彼女が肩に羽衣をかけてくれる。

「また今度返しに来てね」

 約束を胸に植えて地上へ帰る。地上は栄華の終わった広い野原。秋の夕暮れ。枯れ落ちた豆の木。

 数百年の経過した地上で、また見知らぬ怪しい者として暮らす。

 新しい豆を植えて育て、天上の変わらぬ彼女に会いに行く。

 生まれ変わっても。地上が高層ビルに満たされても。

 豆の季節が巡っていく。



植木鉢の花


 勝手に生えてきた。植木鉢に。ミニトマトが枯れた頃に、緑の葉をちょこんと生やして。

 水もやっていないのに、すくすくと茎を伸ばして育ち、つぼみをつけた。

「こんにちは」

 と、開いた花が言う。

 くるんとしたまつ毛、つやつやの目、小さな鼻と口。

 人形の顔みたいなものが、花弁の真ん中に据えられている。

 とうとう疲れ果ててしまったのだ、壁や植物が話しかけてきたらどうかしている証拠。

 呆然としていると、花は砂漠に植えられていた頃の昔話を始めた。

 過酷な旅の末に砂漠に根づき、それでも精一杯生きた日々。

「最後までご清聴ありがとう」

 その言葉を最後に、真ん中の顔は消え、花だけが静かに残された。


#Monthly300 @mon300nov

毎月300字小説企画第9回お題・育つ/育てる

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ