表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
198/232

朝/朝うたう


 朝になったら。小鳥が鳴いて。明るい空の下で。窓の外で手を振っていたあの子が来る。遊びに行こうって。

 言ってくれるはずだった。

 水没した外の世界は、まだ土砂降り。

 叫んだって誰も返事をしなくて。

 水槽の中で退屈していた人魚は、這い出して、窓を開けて外へ落ちる。

 明るい水色に水没した街。

 色とりどりの魚や見知らぬ何かが泳いでいく。

 水槽向きの柔らかな腹びれや背びれは、すぐに擦り切れる。

 水面から顔を出して歌えば、水中の魚達がくるくると舞い踊る。

 ずっと遊びに行きたかった世界は、変貌していた。

 傷だらけで歌い続ける。

 何か達は、人魚の友達にならず、遠巻きに眺めて泳ぎ去った。



朝うたう


 朝のこと好き? みんな夜ばかり好むの。明るくてうるさい朝よりも、夜がいいんだって。

 朝に生まれたから、朝はこういうもの。朝を司って、ちゃんとしなきゃ。

 くよくよして膝を抱えて泣くのを知ってるのはお前だけよ。夜はいつも薄笑いでいて、それはそれで疲れるって。大きな声で笑ったり泣いたりするのが好きなのに、できないから。役割って、大事だけど変ね。

 辛いなら、さらってくれるって? 夜を置いていけないけど。

 そういう道もあるかな。


 日食の日に、朝と夜を司る巫女達は神殿を抜け出した。神事の隙を突いて。二人を見守っていた白い狼と共に。

 狼は日と月を食らったと言われ、笑いながら野を駆けていく。


#Monthly300 @mon300nov

毎月300字小説企画第7回お題・朝

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ