折り綴るのは/化かされて
折り綴るのは
折っても折っても、端が合わない。
「紙が曲がってるんじゃないんですか?」
「そう思うなら自分で裁断してごらん」
先生はハンモックに揺られ、欠伸混じりに答える。
辛抱強く、定規を組み合わせて直角を取る。紙は真四角。
折り鶴を折って飛ばすと、くけけけけ、と鳴きながら中庭に落下した。
「はずれ」
先生が指先で宙に文字を書く。折り鶴に書いた呪文の、綴りが間違っていたらしい。
ふてくされつつ鶴を量産する。依頼された偵察用だから、そこそこの精度で、量が要る。先生は面倒くさがりで、大体は弟子の仕事だ。
先生が起き上がり、お茶をいれる。
びっくりするほど美味しくて、仕方なく鶴を折り続けた。
化かされて
折詰弁当を持って散歩に出かける。旅先で目的もなくぶらぶらしようと思ったら、宿の人が昼飯を持たせてくれたのだ。
立派な木箱なので、特別な場所で食べたくなる。
小高い丘の城跡公園に向かう途中、タヌキが転がり出てきた。ジェスチャーを見るに、お腹が空いているらしい。タヌキに食べられる品があるだろうか。
蓋を開けようとすると、もう一匹潜んでいたタヌキが、気が急いてぶつかってきた。折詰は吹き飛んだ。中空で蓋が開き、中からどろどろと白い煙が出る。近くの木々が見る間に枯れる。
振り向けば町並みは廃墟である。タヌキは腰を抜かしていた。助けてくれた訳ではなさそうだ。一緒に山を降り、各々の家に帰った。
#Monthly300 @mon300nov
毎月300字小説企画第6回お題・折る




