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誰も知らない靴を履き/靴をよごして

誰も知らない靴を履き


 形の合わない靴だと言われた。お兄様のような靴は合わないと。

(さて、それはどうかしら)

 大きな靴を履き、裾の長いスカートはやめて、威勢よく、あるいは冷ややかに話す。

 偉大な為政者だった兄。賢すぎて、罠と知っていても村を守るために飛び込んだ人。

 帝国からすれば何もない辺境の村。それなのに疑心で酒宴に呼ばれ、失われた。

 代わりに野心をたぎらせる。兄が守ろうとした村は、慈悲深くない。状況をひっくり返すのは、似合わぬなりをした妹。

 その靴に口付けるのは、野心を愛しむ、帝国の不遇の末の皇子。

「いずれ奪われるこの命、お前の賭けに使ってみろ」

 制圧軍を逆に味方にして、見知らぬ靴で駆けていく。



靴をよごして


 この靴で跪くのは嫌だった。

 靴先につく皺がないのは、誰にも跪いたことのない者の証なのに。

 妹は簡単に跪いた。落ちた小鳥など、どんな病を持つか分からないのに。

 私は丈夫ですから、と笑って。

 その気立ての良さは、きっと彼女を助ける。

 血筋しか取り柄のない私と違う。


 やがて来るその日、手を取り、燃え盛る王宮から二人で抜け出す。

「お姉様と呼ぶことをお許しくださいね。私達、生き延びなくては。我が家は、元は山奥の神官の出ですもの、何を讃えるか忘れなければ、いかようにもなります」

 妹は軽く笑う。端女に化けて、世継ぎの王子と王女は二人、靴をよごして逃げてゆく。

 命を讃えて落ち延びる。


#Monthly300 @mon300nov

毎月300字小説企画第4回お題・靴

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