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いにしえの
指先でクリームをひとすくい。甘みは足りなくて、すっきりした味わい。さっき翼の生えた牛から搾ったミルクだからか。
スポンジケーキにクリームを塗っていると、甘い匂いに誘われて、人々が集まってくる。専用プリンターで作った擬似生命達だ。牛は窓の外を飛び回り、何人かが捕まえようと格闘中。
「また古文書のレシピを再現してるの? 暇だねカミサマ」
「食べてもいい?」
「いいよ。それと神様じゃなくて、記録装置エーイチ号です。君達が全然物作りしないから、私ばっかり作ってるんだよ」
古い資料に興味のある擬似生命が生まれたら、引き継ぎたいのだが。彼らは笑って、カミサマ、仕事が楽しそうでよかったねと言うばかり。
#Monthly300 @mon300nov
毎月300字小説企画第2回お題・甘い




