色の魔術師と弟子と犬
#Twitter300字ss 参加作品です。
(第三十二回のお題「色」 http://privatter.net/p/310549)
色の魔術師と弟子と犬
指先で色を取る。意思を込めて物に触れると、表面の色が絵具のように伸びる。宙にリンゴを描けば、立体物のリンゴに変わる。習わないとできないし、できても、リンゴ生産なら農家の方が早くて美味しいので、流行らない魔術だ。
色の魔術師は大抵、暖かい地方に住んで、派手な草花の間で色を見分け、集める。集めて帳面に塗っておけば、色の少ない地方でも魔術を使える。滅多によそへ出ないが。
魔術師が留守の日、弟子は色を適当に集めていた。スケッチブックに並ぶのは、寝転がった飼い犬の色。犬の毛色も日差しで変わる。きらきらだ。そのうち眠ってしまった。
夜更けに帰宅した魔術師に引きずられ、ベッドに突っ込まれた。
昔書いていた「色の魔術師」から、ふいにスピンオフしてきました。魔術師(ビーサン履いた若者)と弟子(犬と昼寝)。
余談ですが、最終的には別作品と同じ世界線でいろんなことが起きる予定でした。(そもそも世界線も変えられる、時間に意味がなくなる、でもそれをしないのが、色の魔術師で、地味に見える)
 




