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それらすべて終わったことの

 ベッドの上に、本が広げられている。シーツはめちゃくちゃに皺が寄り、本のいくつかは開きっぱなしだが、閉じられた本は整然と積み上げられ、ベッドサイドに並んでいた。

 部屋の持ち主は、普段であれば決して本を開いたままにはしない。窓も閉め、もちろん戸口もきちんと施錠する。

 寮であっても、勝手に内鍵をこしらえて組み立てるのは、彼の流儀にかなっていた。

 それらがすべて開いているのは、外で起きていた騒ぎが原因だった。

 歳の近い連中の中で、他の生き物に魔法をかけた者がいるらしい。既に危険は去り、担任の教師が犯人を校舎に連れて行き、残りの教師たちは野次馬になった生徒たちを散らしている。

 立ち去りながらも、野次馬たちはまだ盛んに話していた。小鳥が、普段よりかなり大きな体──寮ほどの大きさ──で鳴いて、寮も校舎も大きく身震いしていたが、鳴く程度であって、暴れなくてよかったと。巨大化したそれへの対応は、いち早く駆けつけた輩がやってしまったと。

 さすがは勉強熱心な、根暗な闇魔法使いだと、どこか嘲笑する声が口々にのぼる。

 小鳥は教師たちが回収して、救護室へ運ばれていく。寮の窓枠は風を受けてきいきいと鳴ったが、普段なら迷い込みがちな鳥の一羽も見当たらず、ただ落ち葉が、履き忘れられた靴の中に滑り込んだだけだった。


 ※


 やってしまったことは仕方ないと、釈放されたはずだった。謝ることも遮られて不完全燃焼を起こした生徒は、誰もいない実験教室でため息をこぼす。

 ここで飼われていたトカゲはすべて逃げ出し、外で木々に巣を作っていた鳥たちも、今では飛び立って、なかなか戻ってこない。

 飛び散ったノートも、片付けられて、床は綺麗に拭かれている。壊れた窓も、それなりに直されていた。

 手元のノートの切れ端に目をやる。細胞を大きく広げる魔法のメモには、加減を間違えると対象物が吹き飛ぶので、干した魚でおこなうと書かれていた。実験後に今度はそれを調理して食べ、一定期間しか魔法が持たずに空腹になるかどうかのクエスチョンも書かれており、その横には、生徒の半分くらいが空腹の予想を立てているとメモされている。

 結果を書き込まず、くしゃりとノートの切れ端を握り込む。ローブのポケットに突っ込んでから、中の何かに指が当たって顔をしかめる。

 小枝やトカゲの尻尾、先の尖ったペンなど、要らないものが出てくる。大きくなるどころか縮んでしまった干し魚も。

 さっきまで開いていた窓と、窓際の、あてがわれていた席を見やる。

 干し魚は大きくならず、もう一度、と欲張ったのがいけなかった。通りすがりの小鳥はさぞや驚いたに違いない。窓を抜けて謎の光に触れた途端、視点が大きく広がったのだろうから。

 もう一度ため息をついて、教室の片付けの再点検をする。教師が戻ってくると、再度見回りして、一緒に鍵を掛けて部屋を出た。

お題的なアレ。夏に書いて載せ忘れていた。

400〜1200字、直接触れずに人物描写。情景描写。場所の描写、だけどちょっとやりたいことがあって違う感じにした。(場所以外の描写がある)未公開作の関連習作のような、全然違うような。

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