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玉手箱
漆塗りの箱を貰った。助けた亀は、手短かに言う。
「最近でも同族が助けられ、都度お礼をしていましたが、昨今の事情で家にお呼びしてご馳走をするのが難しくなりました。そこで、あり合わせではありますが、こちらを」
箱を開けると、中におせちのようなものが入っている。添えられた箸でつまむと、頭を風が吹き抜ける。潮風だ。旨みが渦を巻く。無心に食べ終えると、亀は底板を外すよう指示をした。
カタログギフトの冊子が入っている。
「時を超えるほどの力はありませんが、時の先に届く玉手箱です」
亀は準備運動をして、海を滑って行ってしまった。
すぐにギフトを申し込み、亀の実家らしき老舗料亭の進物を手に入れた。
第八十二回のお題「箱」
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