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救われたので旅に出る
救われてしまった。山道で、呆然とする。
過日、山中でたまたま垂れ下がっていた帯を踏んでしまい、それが妖だったため、呪われて峠から動けなくなった。
日が暮れ、昇っても、山を降りられない。通りすがりの人に引っ張られても無理。食料がなくても腹は減らず、自分も人ではなくなった気がした。
ある日、帯(の妖)を捕まえた者が、落とし物ではないかと聞いてきたのだ。
「違います、それ妖です、呪われますよ」
「では燃やして禍根をなくそう」
乱暴な手段で妖は葬られたが、丁寧に読経はしてもらえた。雑だが、旅の僧侶であるらしい。
弟子入りし、諸国を歩いた。妖には、話の通じない奴と呪われやすい奴、と噂された。
第八十一回のお題「救う」
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